■「放置されているとの思い」

 米国医師会雑誌(JAMA)のオープンアクセスジャーナル「JAMA Network Open」に9日に発表された研究によると、イタリアで回復した元入院患者143人のうち87%が、発症から60日後も少なくとも一つの症状に悩まされていた。中でも最も多かったのは、倦怠(けんたい)感と呼吸困難だ。

 また6月末に発表された米疾病対策センター(CDC)の研究では、350人の調査対象者のうち、入院患者の約60%と外来患者の約3分の1が、ウイルス検査で陽性と判定されてから14~21日後も、健康な状態に回復していなかった。

 退院した患者についても、臓器障害や侵襲的な酸素療法に伴う障害、また心的外傷後ストレスなどに対するケアが引き続き必要だと思われる。だが、説明のつかない症状が長引き、自宅で療養してきた人々は、雇用者や医師から疑われたり、不信の目を向けられたりする可能性さえある。

 大規模な症状追跡プロジェクトに関わる英ロンドン大学キングスカレッジ(King's College, London)のティム・スペクター(Tim Spector)氏は「こういった人々は、自分は放置されていて誰も気にかけてくれないとの思いが強い」と指摘する。

 3月に始まった症状追跡アプリのプロジェクトはこれまでに英国で約380万人がログオンし、米国で30万人以上、スウェーデンで18万6000人の利用者がいる。

 研究者らは、最大で10人中1人に30日経過後も何らかの症状があり、数か月にわたって不調の人もいるとみている。問題の一部は症状が多岐にわたることで、その症状の多くは当局の健康上のアドバイスに含まれていない。

 スペクター氏によると、症状追跡アプリによってこれまでに19の症状が確認されているという。同氏は「私はもともとリウマチ専門医で、狼瘡(ろうそう)など、体のあらゆる部分にさまざまな形で表れる非常にまれな自己免疫疾患を研究していた。だが、この病気はさらに奇妙だ」「皮膚疾患だけの人もいれば、下痢だけの人、胸痛だけの人もいる。本当に極めて異常だ」と述べた。