■溶けた皮膚

 リンさんは仕事のせいで個人的な代償を払った。首と胸に皮膚が溶けた痕がまだらに残っている。リンさんは国慶節(建国記念日)に当たる昨年10月1日、抗議デモの取り締まりの最中に腐食性の液体をかけられたのだった。この攻撃で、取材陣も含め複数の人が負傷した。

 治療は耐え難い痛みを伴い、皮膚移植を含め手術は5回に及んだ。リンさんは今年1月、仕事に復帰した。

 警察によると、昨年の抗議デモでは警官約600人が負傷したという。7月初めに行われた国家安全維持法の施行に抗議するデモの最中には、警官の一人がデモ隊によって肩を刃物で刺された。

 多くの地域には警官を中傷する落書きがあり、怒りをあらわにした市民に侮辱されることもある。

■離れていく友人たち

 1児の父である警官のサムさんは、昨年11月にデモ参加者が香港理工大学(Hong Kong Polytechnic University)に立てこもった際、脚を矢で射られた。

 ファーストネームだけの公表を条件に取材に応じたサムさんはAFPに対し、「香港では抗議活動は頻繁に発生するが、あのような暴力に至るとは想像もしなかった」とし、今では警察にあからさまに嫌悪感を示す市民がいることを「残念に思う」と語った。

「われわれを誤解している人もいる。彼らは全体像をはっきりと見ておらず、うわさに影響されている」とサムさん。「友人とは議論しないようにしている。お互いを説得するのは非常に難しい」

 一方リンさんも「かなりの数の友人と疎遠になった」と話す。「彼らは目の前の友情よりも、香港警察に対する自身の政治的見解と偏見を選んだのだ」 (c)AFP/Yan ZHAO, Jerome TAYLOR