【7月15日 AFP】香港の警察官リンさん(仮名、38)は反政府デモの取り締まりの最中に、腐食性の液体を浴び、やけどを負った。だが後悔はなく、今も職務に打ち込んでいる。

 昨年7か月間続いた抗議デモによって香港市民の分断は激しくなり、多くの人が警察に嫌悪感を抱くようになった。一方、警官らの多くは、自分たちが不当に非難されていると感じている。

 中国政府が先月末、民主派の活動を完全に打ち砕く目的で施行した国家安全維持法により、香港警察の権限は拡大された。

 同法が施行される前の週、警察本部でAFPの取材に応じたリンさんは「香港が中国の一部であることは否定できない。中国領土に国家安全維持法を導入するのは妥当だ」と述べた。「すべての法律は道具だ。この法律に違反しようとするから、われわれがそれを取り締まらなくてはいけなくなる」

 リンさんは、抗議デモの参加者による報復を恐れ、仮名で取材に応じた。

 リンさんと、デモ参加者の放った矢で負傷した別の警官サムさん(40)とのインタビューは香港警察が手配したもので、警察の広報担当者が同席した。

 警察は昨年、中国政府が半自治権を有する香港への支配力を強めたことに抗議するデモおよび衝突の最中に、9000人以上を逮捕した。

 人権団体は、治安部隊はデモ隊の逮捕、排除、拘束の際に日常的に過剰な暴力を行使していると非難している。だが、警察は残虐行為が行われたという主張を一切否定し、デモ参加者による暴力に見合った対応をしていると説明している。デモ隊への対応を理由に免職処分となった警官は一人もいない。