【7月28日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)のトラウマから、米ニューヨーク市を離れる人がかつてなく増えている。このため、空き家が増え市内のアパートが格安になった一方、近郊の不動産価格は高騰している。

 ニューヨーク市を愛し、11年間住んでいたニック・バーンホースト(Nick Barnhorst)さん(41)は、今年2月の時点では「まだ出て行く心の準備ができていない」と考えていた。子どもが生まれ、家族が増え、郊外へ引っ越すことも考えたが、少なくとも1年は先の話だと思っていた。

 だが数週間後、新型ウイルスがニューヨークで猛威を振るい始めた頃、妻が3人目を妊娠していることが分かった。ニックさんは「できるだけ早く、こんなところから出て行かなくては」と実感したという。

 ニックさんは来週、ニューヨーク市北部の高級住宅地ママロネック(Mamaroneck)の一戸建ての契約を結ぶことになっている。

「街が閉鎖している間、子ども2人と4か月も小さなアパートに閉じ込められた。ニューヨークをニューヨークたらしめていたことが一切なくなってしまった。今となってはここを出るのは簡単だと思える」とニックさんは話す。

「だが1、2年後に、一体自分たちは何をしているのだろう、一体全体なぜ離れたのだろうと思っているかもしれないという考えが頭の片隅にいつもある」

 ニューヨーク郊外の不動産市場が好景気に沸くにつれ、新居探しは困難になり、価格交渉もできなくなっている。

 ニュージャージー州で人気のモントクレア(Montclair)の不動産業者リチャード・スタントン(Richard Stanton)氏によると、最近では物件が提示価格の2割増しで売られることが珍しくないという。

「(経済活動が)再開され、市場に物件が出ると、人々が家を求めて殺到した」とスタントン氏。「需要がこんなにあるとは思わなかった」

 向こう半年から1年は、供給が需要に追い付かないとスタントン氏は予測している。