【7月16日 AFP】ポピュリズム(大衆迎合主義)が社会の分断を招き、二極化が進んでいる今、台湾のデジタル担当政務委員(IT担当相に相当)を務める唐鳳(Audrey Tang)氏(39)は少数派に共感を示し、「すべての側面」を見るという自身の政治手法は、トランスジェンダーというアイデンティティーに支えられていると話す。

 唐氏はトランスジェンダーであることを公にした世界初の閣僚で、14歳で学校をやめてから自分の道を開拓してきた。

 プログラミングを独学し、学校教育を離れて2年後には自身の会社を立ち上げ、米カリフォルニア州シリコンバレー(Silicon Valley)でキャリアを構築した後、台湾に戻って入閣。自称「保守的な無政府主義者」としては異例の歩みだ。

 台湾の蔡英文(Tsai Ing-wen)政権は2016年、党派政治に染まっておらず、慣例にとらわれない手法を取る唐氏に魅力を感じ、閣僚に抜てきした。

 トランスジェンダーというアイデンティティーが仕事にはどう影響しているか。AFPの取材に応じた唐氏はこの質問に対し、「私たち(トランスジェンダー)は二元論的思考をしないから、やりやすいこともあると思う」と答えた。

「世界の半分は自分たちと違う、というふうには考えない」

 20代前半で公的に性別を変更し、中国語名と英語名を現在のものに変え、「she(彼女)」という代名詞を採用した。ただし、入閣書類にはどちらの性別も記していない。

「少数派であることに苦しむさまざまな人たちに、私はより共感できる」と言う。「私は誰か特定の人の味方ではない。全ての人の味方でいるつもりだ」

 唐氏は、さまざまなやり方で閣僚としての慣習を打ち破っている。職場には徒歩通勤し、アイデアを提供してくれる地元の人たちとの自撮り写真に応じる。自身のチーム内では上下関係を設けず、多くの会合を公開し、物理的な省は持たない。その代わり、政府の各部門を行き来して問題解決と助言を行っている。