【7月14日 People’s Daily】スイッチを押すと、照明がパッと光り輝く。その明るさが、この里に大きな幸せをもたらした。

 中国新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)で「唯一、送電線のない里」と言われたタシュクルガン・タジク自治県(Tajik Autonomous County of Taxkorgan)大同郷(Datong)に6月下旬、送電線が敷かれた。

 アミルジャンさんの家では、長らく放置していた冷蔵庫をきれいに掃除し、久しぶりに電源を入れた。「以前は電圧が不安定だったから変圧器は壊れ、冷蔵庫の中の物が腐ってしまった。使い物にならない、ただの飾りだった。今は24時間しっかり動くから、冷蔵庫の食べ物を安心してゆっくり食べられるようになったよ」

 パミール高原の高い山々に取り囲まれている大同郷。遊牧生活を送ってきた数百戸のタジク族の住民は長年ろうそくを使い、夜を過ごしていた。1986年に水力発電所が建設され、アミルジャンさんは地元でただ1人の管理人を務めるが、「水がなければ電気も生まれない。1年のうち2か月は電気が来ない」と振り返る。

 大同河の水をダムに貯めて発電しているが、電力は4万ワット程度で、送電できるのは夜間だけ。この数年間、補助電力として各家庭にソーラーパネルが設置されたが、住民は「曇りの日はすぐに電気が消える」と嘆いていた。

 いま、そうした日々の憂いは過ぎ去った。政府の「脱貧困計画」に基づき、長さ158キロにわたる送電線がクズルス・キルギス自治州(Kizilsu Kirghiz Autonomous Prefecture)から敷設され、鉄塔が大同郷にも姿を現した。6月29日、大同郷変電所に3万5千アンペアの電気が届き、里の暮らしが大きく変わった。

 アミルジャンさんがすぐ買ったのは、電気ポット。客人をもてなすミルクティーが5分足らずで作れるようになった。「以前はまきをたいてお湯を温めていて、時間がかかるし面倒だった。今度は電子レンジと炊飯器も買うよ」

 大同郷では裸麦と小麦を栽培しているが、電気を必要とする製粉機がなかった。住民は麺を食べたい場合、遠方に出向いて割高な小麦粉を買うしかなかった。これからは自前で小麦粉を作れるようになり、時間とお金の節約となる。

 診療所で働くアミルジャンさんの兄ハジムジャンさんも安定した電気の到来を大喜びしている。診療所にある検査機器はこれまで使われておらず、村人は80キロ離れた他の郷で健康診断を受けていた。「電気が通って、これからは設備がついに使える。みんな家で検査を受けられるようになる」

 アミルジャンさんがいま最も楽しみにしているのは、来年冬の「暖房改革」だ。「住民はいま石炭で暖を取っているが、価格が高い上、灰が家屋にたまる。電気で暖房が取れるようになれば、便利で清潔になる。明るく暖かい部屋で、家族全員がゆったりとテレビを見られる。電気は私たちの生活をすべて変えてくれている」 (c)People's Daily/AFPBB News