■「庶民のワクチン」

 そしてビヤニマ氏は各国に「エイズの悲惨な経験から学んでほしい。薬が見つかっても、私たちアフリカ地域の人々が恩恵を受けるまでには10年もかかった」と呼び掛けた。「10年という歳月を失われた命で数えれば、数百万人の命が失われたことになる」

 新型コロナウイルスのパンデミックが同様のシナリオをたどらないよう、UNAIDSはコロナについても「庶民のワクチン」開発を強力に推進し、発見される治療薬への公平かつ公正なアクセスを求めている。

 世界保健機関(WHO)は4月、COVID-19の検査法、ワクチン、治療薬の開発と生産を加速し、公平なアクセスを確保するための世界的な取り組みを開始した。

 ビヤニマ氏はあらゆる国・地域で、手頃な価格でのワクチンや治療薬の入手を可能にすること、また医療従事者や脆弱(ぜいじゃく)な立場にある人を優先しつつ、それらのワクチンや治療薬を「無料配布」する必要性を強調した。「裕福な人々が先にやって来て買い占め、リスクにさらされていないのにワクチンを接種している間に、他の人々が待たされ死んでいくなどということがあってはならない」

 COVID-19のワクチンや治療薬を早急に探し出そうと、各国政府は研究プロジェクトに数十億ドル(数千億円)を投じているが、これは利益追求を優先する製薬会社に医学研究・開発をリードさせるという古いモデルの「失敗」を露呈していると、ビヤニマ氏は批判する。

 そして「医療技術を開発し分け合う新しいモデルを世界が協力して推進できれば、エイズだけでなく他の疾病の治療にも影響を与えることは間違いない」と主張する。

 企業が開発に投資しても金銭的に見合わないと判断したために、貧しい国では治療法がない病気が多数あることをビヤニマ氏は指摘している。「利益よりも命が優先されなければならない」 (c)AFP