【7月12日 CNS】緑が生い茂る山々に囲まれた、静かな農村。訪れた観光客たちは豊かな自然の暮らしを満喫し、時にはプールなどの娯楽施設も楽しむ。中国・江西省(Jiangxi)贛州市(Ganzhou)にある坪地山村(Pingdishan)は、貧しい村から農村観光を楽しめる観光スポットに様変わりした。

 坪地山村は金山を有する以外これといった経済資源がなく、村人の考え方も保守的で長年、停滞が続いていた。2012年、村を離れてビジネスで成功していた陳秋生(Chen Qiusheng)さんは右肩上がりだった事業を手放し、村に戻って幹部の選挙に立候補。村党支部書記に選ばれた。

「以前は村のインフラが悪く、自動車も入れませんでした。村のある若者が交際相手の女性を連れてきたら、女性はあまりの田舎に驚いて逃げてしまったほどです」。当時をそう振り返る陳さん。まずは道路の整備に取りかかり、親戚や友人、経済的に余裕のある村人に募金を呼びかけ、わずか3日間で約30万元(約459万円)を集めて5本の道路を補修した。

 道路の次は、収入をどう確保するか。村党支部委員会や村民委員会で協議した結果、水が豊かで空気がきれいといった自然を生かし、農村観光を興した。

 2016年に江西省の農村振興モデルプロジェクトとして援助された100万元(約1531万円)を元手に、村の126世帯が出資して共同の観光会社を設立。村あげての観光業をスタートさせた。

 村を美しい景勝地とするため、農道や橋を整備し、ソーラー街路灯を設置し、村に入る道沿いにはキンモクセイの木を2万本植えた。森林の自然を味わう観光客向けのオリエンテーリングを始め、プールや児童水上遊園地、ゲートボール場、農耕文化展覧館などの娯楽施設も建てた。

 陳さんは「村では観光業以外に、野菜や果物の栽培にも取り組んでいます。パッションフルーツやドラゴンフルーツ、キウイなどを栽培し、品質と効率の向上に力を入れています」と話す。

 村民の生活は豊かになった。村の女性、曹楊姣(Cao Yangjiao)さんは「以前は夫と義父が出稼ぎで得た収入だけが頼りだったけど、今は私と義母が村で働いて、収入は何倍も増えました。もう、村から出たいとは思いません」と喜びを語る。

 経済的後進地域だった農村が、村民自ら会社を設立した「産業村」に生まれ変わったことは、地域振興の象徴といえる。

 江西省贛州市ではこの8年間で、11県と1023村が経済的貧困地帯から抜け出し、192.06万人が貧困基準を上回った。地域の貧困率は26.71%から0.37%にまで下がった。(c)CNS/JCM/AFPBB News