【7月7日 AFP】フォーミュラワン(F1、F1世界選手権)で通算6度の総合優勝を誇るメルセデスAMG(Mercedes AMG)のルイス・ハミルトン(Lewis Hamilton)は、5日に行われたオーストリアGP(Austrian Grand Prix 2020)決勝の前に膝をつくことをドライバー仲間に強要したりしていないと説明し、自分に連帯を示してくれた13人に「感謝している」と語った。

 波乱のオーストリアGP決勝で二つのペナルティーを受け、表彰台に届かず4位に終わったハミルトンは、レース前のドライバーズ会議で自身の立場を明確にする上で、膝つきを求めることは避けたと明かし、「自分は一度も誰かに膝をつくように頼んだり要求したりしていない。その話題を持ち出したこともない」と語った。

「セブ(セバスチャン・ベッテル<Sebastian Vettel>)とロマン(・グロージャン<Romain Grosjean>)が議題に挙げて、ドライバーに膝をつくかつかないか尋ねた。すると、数人がそうするつもりはないと答えた」「僕は全員に自分の意思を主張してもらった上で、彼らに対して『みんな、ちょっといいか。とにかく知っておいてもらいたい。僕はやるつもりだけど、みんなは自分が正しいと思う行動をしてくれ』と話したんだ」

 その一方でハミルトンは、レース前に連帯を示してくれた仲間のドライバーに感謝し、「それと、僕と一緒に膝をついてくれた人たちに本当に心から感謝する。それだけでもすごく強いメッセージだと思うけれど、結局のところ膝をつこうがつくまいが、それで世界を変えられるわけじゃない」と語った。

「それに、世界ではもっとすごく大きな問題なんだ。僕は誰もが自分自身の選択をする権利があると思っている。自分にとっては、それが正しいと感じたことだった。だけど、昨夜(4日)までどうするか決断していなかった」

 F1で唯一の黒人ドライバーであるハミルトンは、今回の団結は「End Racism(人種差別を終わらせる)」というF1の立場が推進力になったとも語った。レース当日にはドライバー全員がこのメッセージが書かれたTシャツを身にまとい、ハミルトンは「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」のシャツを着ていたが、背中には同じ「End Racism」の言葉があった。

 新型コロナウイルスによるロックダウン(都市封鎖)の影響で活動停止状態に陥って以降、欧州で行われた初の主要国際スポーツとなったF1は、「We Race As One(一丸となってレースをする)」のスローガンを掲げてレースに臨んだ。

 そうした中で、シャルル・ルクレール(Charles Leclerc)、マックス・フェルスタッペン(Max Verstappen)、ダニール・クビアト(Daniil Kvyat)、キミ・ライコネン(Kimi Raikkonen)、アントニオ・ジョビナッツィ(Antonio Giovinazzi)、そしてカルロス・サインツ・ジュニア(Carlos Sainz Jr.)のドライバー6人は膝をつかなかった。

 ルクレールとフェルスタッペンは事前にツイッター(Twitter)で理由を説明していたものの、一部の選手が膝つきに参加しなかったことについては、せっかくの団結がむなしいジェスチャーになってしまったと批判する声も多く上がった。

 ハミルトンは、「正直なところ、自分は全員の理由や意見を把握しているわけじゃない」とすると、「他の何人かのドライバーの意見は承知しているが、それはプライベートなことだし、共有するつもりはない」「結局のところ、膝をつかなければならないというシナリオを誰も強制されるべきじゃないんだ」と語った。(c)AFP