【7月13日 AFP】今年3月、フランス版アカデミー賞(Academy Awards)と呼ばれる映画賞「セザール賞(Cesar Awards)」の授賞式で、強姦(ごうかん)罪に問われ、数々の性的暴行疑惑があるロマン・ポランスキー(Roman Polanski)氏が最優秀監督賞を受賞したことに対し、抗議の意思を示した人々が次々と会場から退席した。

 女優のノエミ・メルラン(Noemie Merlant)さん(31)は、あのときに席を立ったことを全く後悔していない。4か月前の劇的な夜を振り返り、「共演者たちと一緒に退席したことに誇りを持っている」とAFPに語った。

 ポランスキー監督は、1977年に性的同意年齢未満の13歳少女に対する法定強姦により訴追され、米国ではいまだに指名手配されており、その後もさまざまな性的暴行の告発を受けている(自身は告発内容を否定)。

 メルランさんと一緒に退席した共演女優のアデル・エネル(Adele Haenel)さんは、ポランスキー監督の受賞を聞くと、「恥を知れ!」と叫んだ。自らも10代の頃、ある監督から性的暴行を受けたことを公表したエネルさんは、フランスでセクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)の告発運動「#MeToo(私も)」の先頭に立ってきた。

 メルランさんはセリーヌ・シアマ(Celine Sciamma)監督の『Portrait of a Lady on Fire』で、エネルさんと共にセザール賞の最優秀女優賞にノミネートされていた。

■「一石を投じたのなら、いいこと」

 フランス映画史においておそらく最も苦々しく、物議を醸した授賞式となったこの出来事は、同国の映画界に衝撃を与えた。だが、メルランさんは「一石を投じたのだとしたら、いいこと。それで議論が始まる」と話す。

「世界は変化しているのだから、前に進まなくては」「今、私たちは立ち上がっているし、物事が変わらなければならないときには、抗議して退席する。そういうことが起きなくちゃいけない」

「これは、みんなが話したいと思っている問題だし、たとえ話題にしたくないとしたら、それはそれで興味深い」とメルランさんは言う。「女性が声を上げることで、自分自身について問うことができる。だからこそ、この新しい世代の(女性の)多くはショックを受け、また憤っている」とポランスキー監督をめぐる出来事に言及した。

 メルランさんはたくさんの女性監督と組んできたおかげで、女性を中心に描いた作品に多く出演してこられたことは幸運だと語る。「これまで私が演じてきた女性たちは、対象物ではなく、主体だったと思う。これからも、そうあり続けたい」

 次の出演作であるフランス映画『Jumbo』では、遊園地で奇妙なアトラクションづくりに一人挑む女性を演じる。新作のフランスでの公開は新型コロナウイルス流行によるロックダウン(都市封鎖)で遅れたが、延期が決まる前の3月、メルランさんは「自分にとって居心地の良い範囲から飛び出して、どこか他の場所に連れて行ってくれ、不安を覚えるような役や物語に挑戦したい」と語った。(c)AFP/Sophie LAUBIE