【7月26日 AFP】イラクで「ナイルの花」と呼ばれるホテイアオイ。ユーフラテス川(Euphrates River)に浮かぶその大きな葉と繊細な紫色の花は息をのむ美しさだが、チグリス川(Tigris River)と合わせて「二つの川の国」として有名な同国の水路を「窒息」させている。

 南米のアマゾン川(Amazon River)流域原産の侵略的な外来種であるホテイアオイは、世界中の生態系を破壊しているが、成長が非常に速いこの「迷惑植物」は、イラクには特別なリスクをもたらしている。

 ホテイアオイは20年前、観賞用としてイラクに持ち込まれた。同国は以前より定期的な干ばつに見舞われており、水資源の乱用や汚染、上流の河川ダムによる水量の減少にあえいでいるが、広大なチグリス川とユーフラテス川は今、ホテイアオイの急激な繁殖で「窒息」を起こしている。

 光沢のある葉は、水面を厚く覆い、1日に最大5リットルの水を吸収し、その下にいる水生生物にとって不可欠な太陽光と酸素を遮断してしまう。川で釣ったコイを地元の市場に卸している漁師にとっては手ごわい敵だ。ホテイアオイが繁殖して、コイは死に、平らな葉や根、花が漁網に絡み、ボートの移動を妨げている。

 南部ディカー(Dhi Qar)州の漁師、ジャラブ・アルシャリフィ(Jallab al-Sharifi)さんは「このナイルの花に生活の道を奪われている」と語った。アルシャリフィさんはユーフラテス川で生計を立てている。

 ホテイアオイは、農家にも打撃を与えている。川の上流に位置するトルコとイランが建設したダムの影響で川の水位がもともと減少していたところに、ホテイアオイは、さらに水位を下げ、農業用水路が詰まる原因となっている。

 ホテイアオイは、さらに別の圧力を引き起こしているとイラク当局は警鐘を鳴らしている。ホテイアオイが100平方メートルに広がると重量は最大5トンほどになり、川沿いの老朽化したインフラに多大な負担をかけるという。

 アルバダー(al-Badaa)村では、ユーフラテス川に架かっていたれんがの橋の太い橋脚が今はホテイアオイで覆われている。上流に位置するダムに囲まれた土地もホテイアオイで覆われ、沼地のようになっている。(c)AFP/Asaad Niyazi/Ali Allaq