【6月30日 AFP】芸者の茶々さん(32)は指先をそろえて床の上につけ、何キロも離れた場所にいる観客に優雅に頭を下げる。オンラインで対面しているのだ。

 日本は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による最悪の事態は免れたものの、4月には感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令され、芸者を含む夜の街に影響を与えた。

 茶々さんは、例年は4月から6月はとても忙しい時期だったと語る。しかし今年は、仕事が全くなくなったという。

 そこで登場したのがオンラインサービスだ。昨年IT系企業が立ち上げたプロジェクト「Meet Geisha」は当初、観光客の団体が芸者をよりリラックスできる環境で鑑賞する方法として発案された。東京五輪などを目当てに訪れる外国人観光客にあやかるはずだった。

 しかし、新型ウイルスの流行で五輪が延期となり、国をまたいだ観光客の移動も止まったため、同社は方針を変更。訪日事業部責任者の西村環希(Tamaki Nishimura)さんは、箱根芸者のコミュニティーにオンラインでの活動をはたらきかけた。

 茶々さんら芸者は、最新のフォーマットであるビデオ会議サービス「ズーム(Zoom)」を通じて、伝統芸能を披露することができるようになった。

 オンラインでの活動は収入源となるだけでなく、芸者に興味を持つ人の数を増やし、幅を広げることにもつながる。西村さんによると、低い価格設定で若い新規顧客層にアプローチすることも、サービスの狙いの一つだという。(c)AFP/Harumi OZAWA