【6月19日 AFP】香港で最長寿を誇る政治風刺番組が、民主派デモの混乱や国家安全法の導入で自由が制限される懸念の中、19日夜の放送で最終回を迎える。かねて親中派から民主派びいきだと批判されていた同番組は先ごろ、警察に批判的な放送内容をめぐって当局の調査と叱責を受けており、事実上の打ち切りだ。

 公共放送RTHKの政治風刺番組「頭條新聞(Headliner)」は、31年にわたって公人を鋭く風刺した寸劇を堂々と放送し、香港政府をいら立たせてきた。

 だが、新型コロナウイルスの感染拡大が問題となり始めた2月、ごみ箱から飛び出してきた警官がマスクをめぐる寸劇を披露するエピソードを放送。これが当局に問題視され、番組打ち切りに追い込まれた。当時、香港の市民や医療関係者がマスクの入手に必死になる中、警察だけは十分にマスクを確保していることが地元メディアに報じられていた。

 市警察トップなどからの苦情申し立てを受け、通信・放送を規制監督する香港の政府機関「通信事務管理局(Communications Authority)」が調査を開始。先月、問題のエピソードは警察に対する「誹謗(ひぼう)中傷」だとする苦情の正当性を認める判断が下り、RTHKが謝罪声明を発表した。

 RTHK番組スタッフ労働組合のグラディス・チウ(Gladys Chiu)会長は、「『頭條新聞』は風刺番組だ。視聴者によって反応は異なる。視聴者全員の受け止め方に対して責任を負うよう番組に要求するのは不当だ」と訴えている。

 17日に行われた番組最終回の収録で、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム、Carrie Lam)行政長官を風刺する女帝に扮(ふん)したベテラン俳優の呉志森(Ng Chi-sum)さんは、「またね、と言いたいけれど、そんな大うそはつけない」とコメントした。

 英公共放送BBCをモデルにしたRTHKは、番組制作に当たっては政府から独立した編集権を公式に維持してきた。だが、香港政府は先月、「RTHKの運営管理を見直す」特別委員会を設置したと発表している。(c)AFP/Su Xinqi