新型コロナ、続く渡航制限で離ればなれの家族
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【6月19日 AFP】日本で暮らすフランス人女性ジュリ・セルジャン(Julie Sergent)さん(29)は今年4月、フランスにいる父親が急死し苦渋の選択を迫られた──葬儀に参列するためにフランスに向かえば、日本の家に当分戻って来ることができなくなるためだ。
新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるために各国が敷いたロックダウン(都市封鎖)措置は、アジア地域でも緩和されつつある。しかし、海外への渡航制限はいまだ厳しいままだ。
日本においては、国籍さえあれば出国と再入国が可能となっているが、高リスク指定された地域からの入国では到着時にウイルスへの感染を調べるために検査を受け、隔離措置に従うことが求められる。
だが日本国籍を持たない場合はそのような選択肢すらなかった。日本とのかかわりがどれだけ長くても、また結婚相手が日本人だとしても、国籍がない場合は別の制限がかかるとされたのだ。
こうした理由からセルジャンさんは、4月に父親が急死した際、厳しい状況に置かれることとなった。もしフランスに向かったら、しばらくは現地で足止めされることは分かっていた。「仕事やアパートを失う。収入も当分はなくなるかもしれない」と思ったと、当時の心境を語った。
人道的例外措置を申請できるかもしれないとのアドバイスはあった。しかし、葬儀はその2日後に迫っていたため、そうした時間はなかったのだという。「母はひどく落ち込んだ。父の葬儀に参列できなかったのは、家族の中で私一人だけだった」
■「あなたにもう一度会うために持ちこたえている」
名前を「ゆかり」とだけ明かすことを求めたある女性も、同じような状況に直面した。
米国人と日本人の両親との間に生まれたというゆかりさんは現在、日本人の夫と9歳の息子とともに東京に住んでいる。だが日本国籍は持っておらず、がん闘病中の母親がいる米国に渡れば、息子や夫と離ればなれになってしまうことが懸念された。
母親は3月に胆管がんと診断され、4月にはあと数週間の命かもしれないと医師から告げられた。通常であれば、ゆかりさんは飛行機に乗ることを何よりも優先させただろう。しかし、この状況下では、そうすることができず、母親のサポートを家族の友人らに頼まざるを得なかった。
一時的に危険な状態になったものの、母親の健康はその後安定した。ただ、がんが治ったわけではない。
ゆかりさんは「母を見てくれている人から『あなたのお母さんは、あなたにもう一度会うために持ちこたえている』と言われた。それを聞いてとてもつらかった」と話した。