【6月16日 AFP】米食品医薬品局(FDA)は15日、抗マラリア薬の「ヒドロキシクロロキン」と「クロロキン」を新型コロナウイルス感染症治療に用いることを認めた緊急使用許可を撤回した。両薬剤はドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領が推奨してきたもので、FDAの決定により政治色の強い治療法が利用不可能となった。

 両薬剤は当初、研究室での実験で新型ウイルスを不活性化させる効果が確認され、初期の小規模な試験では人間の体内での有効性も示唆されていたことから、FDAが今年3月に新型ウイルス感染症の治療目的での緊急使用を承認した。

 しかしその後、より大規模で管理の行き届いた実験により、両薬剤が新型コロナウイルス感染症の治療にも、ウイルスにさらされた人の感染防止にも効果がないことが判明。同時に、特定の患者に不整脈を起こす恐れなどの安全性の懸念が浮上していた。

 FDAによる許可の撤回は、ヒドロキシクロロキンを繰り返し後押ししてきたトランプ氏にとって逆風となる。同氏は直感を基に、同薬剤は新型ウイルス治療の「ゲームチェンジャー」になりうる薬だと言明。また、自身が新型ウイルス感染防止のためヒドロキシクロロキンを服用しているとも表明していたが、最近の臨床試験では感染防止にも効果がないことが分かっている。

 ヒドロキシクロロキンは米FOXニュース(Fox News)などの右派ニュースメディアや、ブラジルのジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領も強く支持。フランスでも、初期の実験で同薬剤の新型ウイルス治療効果を示したディディエ・ラウルト(Didier Raoult)医師の支持者らが推奨してきた。(c)AFP