【6月15日 AFP】米IT大手グーグル(Google)は14日、第2次世界大戦(World War II)期のウィンストン・チャーチル(Winston Churchill)元英首相の写真が検索トップに表示される歴代英首相リストから消失していることについて調査する方針を明らかにした。チャーチルをめぐっては、人種差別に関する記録が残っており、物議を醸していた。

 グーグルによると、チャーチルの写真が削除されたのは「ナレッジグラフ」と呼ばれる検索ワードの関連情報をまとめて表示する機能からのみで、グーグル上ではチャーチルの多数の写真を容易に見つけることができる。

 グーグルの検索関連広報担当はツイッター(Twitter)で、「ウィンストン・チャーチル卿の写真がグーグル上のナレッジグラフの登録から外れていることを確認した」と明かし、「心配をかけて申し訳ない。これは意図的なものではなく、解決する予定だ。ナレッジグラフ上の写真は自動的に組み込まれ、更新される。更新中には、写真が一時的に消えることがある」と説明。チャーチルの画像を可及的速やかにナレッジグラフに戻す方針だという。

 また、「自動更新によって写真が消えた原因について厳密な調査を実施し、こうしたシステム内に対処すべき改善点があるかを確認していきたい」と明らかにした。

 しかし、チャーチルの写真の消失は、すぐさまソーシャルメディア上で反発を招いた。

 英保守党のサイモン・クラーク(Simon Clarke)議員は、「これがグーグルの意図的な方針であればショッキングだ」「現在その写真が抜けているチャーチルがいなければ、西欧はほぼ間違いなく(ナチス・ドイツに)隷属していただろう」とコメントした。

 先週末に首都ロンドンの中心部で人種差別抗議運動「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」を支持するデモが行われ、チャーチルの銅像に「人種差別主義者」と落書きされるなど、チャーチルは人種差別をめぐる論争の渦中に置かれている。

 落書きが広く非難される一方、チャーチルはその長い政治家としてのキャリアの間、一貫して非白人に対して偏見を持ち差別的で、その政策は1943年にインドで飢饉(ききん)を招き、数百万人を死なせたと批判する声も上がっている。

 チャーチルの伝記を書いたことがあるボリス・ジョンソン(Boris Johnson)首相は、チャーチルが標的となっていることは「不条理で恥ずべき」ことだと非難し、反人種差別デモは「過激派に乗っ取られている」と述べた。(c)AFP