【6月11日 AFP】ファンタジー小説「ハリー・ポッター(Harry Potter)」シリーズを手掛けた英作家J・K・ローリング(J.K. Rowling)さん(54)は10日、自身のブログで過去に家庭内暴力や性暴力を受けたことがあると公表した。一方で自身は「被害者ではなく生還者だ」と述べている。

 ローリングさんは、トランスジェンダーの女性についての自身のコメントに批判が集まっていることについて、性自認と自身の過去の問題に関する3695語のエッセーをブログに投稿。そこでローリングさんは「これは簡単に書けるものではない」「20年以上、私は世間の目にさらされているが、家庭内暴力と性暴力の生還者であることについてはこれまで一切公言してこなかった」とつづっている。

 また、公言してこなかった理由について「自分にそのようなことが起きたことを恥じているからではなく、思い出すことがトラウマとなっているからだ」と説明した。

 ローリングさんは先週、「月経がある人たち」という表現がタイトルに入った意見記事を引用しつつ、ツイッター(Twitter)に「以前はこの人たちのことを指す言葉があったはず」とのコメントを投稿。トランスジェンダーの女性に対する差別であるとの批判が巻き起こった。

 また昨年12月には、トランスジェンダーの人々は生物学的な性別を変えることはできないとの発言により失職した研究者を擁護し、トランスジェンダー嫌悪だとの非難の声が上がった。

 ローリングさんはエッセーで「トランスジェンダーの活動家たちからの非難や脅しが私のツイッターのタイムラインにあふれている」「多くの女性たちがトランスジェンダーの活動家たちを恐れているのも当然だ。身に起こったことを私に話そうと本当に多くの人が連絡を取ってきたから、これは確かだ」と述べた。

 一方で「私が自分の過去に言及するのは、地球上のすべての人間同様に私にも複雑な過去があるからで、それは私の恐怖、興味、見解を形成している」と述べ、自身も若い頃に性自認について悩んだことがあるため、長年かけてトランスジェンダーに関する問題について考えてきたとしている。

「本で性自認の考えについて学ぶ時、若い頃に自分が精神的に無性であったことを思い出す」

「1980年代の自分には男性になるという現実的な可能性はなかったので、メンタルヘルスの問題や、10代の少女の多くを体形の悩みへといざなう他人の性的な視線や決めつけを乗り越えさせてくれるものは、本や音楽でなければならなかった」

 ローリングさんは「性的にも性に関係なくても混乱したり落ち込んだりしてもいいし、自分が何者か分からなくてもいい」と分かるまで「女性であることに対する迷い」を感じた時期があったという。

 また、一方で「近年のトランスジェンダー運動の急激な広まり」により、あまりにも多くの人が十分な考えを持たずに性別適合手術を受ける結果となっていると指摘した。(c)AFP/Dmitry ZAKS