【6月11日 AFP】イタリアで10日、新型コロナウイルス感染により家族や親族を亡くした遺族50人が、感染拡大の刑事責任を問う告発状を北部ベルガモ(Bergamo)の検察当局に提出した。現地からの報道によれば、検察は12日にもジュセッペ・コンテ(Giuseppe Conte)首相を事情聴取し、保健相と内相にも聴取を行う方針だ。

 イタリアでは、新型コロナウイルス感染で3万4000人以上が死亡している。感染拡大の責任を問う団体訴訟は国内初。

「求めているのは復讐(ふくしゅう)ではなく、正義だ」と、フェイスブック(Facebook)で遺族団体を結成したステファノ・フスコ(Stefano Fusco)氏(31)は説明した。自身も、老人介護施設で暮らしていた祖父を新型コロナで3月に亡くしている。

 遺族団体には全国から遺族が参加しているが、ベルガモの検察当局に告発したのは、同地がイタリア国内で最も流行が深刻だった地域で「悲劇のシンボルとなっているから」だという。

 ベルガモの検察当局は広範囲の捜査を開始した。遺族らは流行地域の封鎖の遅れや、北部ロンバルディア(Lombardy)州で長年にわたり医療予算が削減されてきたことなどが危機を招いたと非難している。

■知らぬうちに200キロ遠方に埋葬

 遺族の一人、クリスティーナ・ロンギーニ(Cristina Longhini)さん(39)は死亡した父親(65)について、体調がとても悪化していたのに呼吸困難に陥っていなかったため入院を拒否されたとAFPに語った。

 最終的に父親はベルガモの新型コロナ対応病院に搬送されたが、集中治療室に空きがなかった。別の病院を探すよう求められ、家族は必死に探したが、見つけられなかった。「病院側は、父が死亡したと私たちに連絡することも忘れていた」という。

 ベルガモ周辺の墓地は死者であふれており、父親のひつぎは他の犠牲者らと一緒に軍のトラックに積まれ、約200キロ離れた墓地に運ばれた。家族は後日、埋葬料の請求書を受け取って初めて父親の埋葬場所を知ったという。ロンギーニさんは訴訟を起こした理由として、「危機への対処が的確でなかったこと、誰も責任を取っておらず、謝罪もしていないこと」を挙げた。

 フスコ氏によると、さらに150人が告発の準備を進めているという。(c)AFP/Francesco Gilioli with Ella Ide in Rome