【6月11日 AFP】国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長は10日、人種差別に対する選手の膝つき抗議について、IOCのアスリート委員会が「品位のある」表現方法を模索しなくてはならないと主張し、自身が詳しく言及することは避けた。

【写真】外国特派員協会、コロナ風刺の五輪ロゴ取り下げ謝罪

 世界中の多くのスポーツ選手は、5月に白人警官の拘束下で死亡した米黒人男性ジョージ・フロイド(George Floyd)さんを哀悼するため膝つき抗議を行い、反人種差別への連帯を示している。

 そうした中、IOCは五輪での「デモや政治的、宗教的、人種的なプロパガンダ」を規則で禁止しており、膝つき抗議は1年延期になった東京五輪で大きな問題の一つになるとみられている。

 バッハ会長はIOC理事会のビデオ会議後、無差別は五輪ムーブメントの根幹の一つであると主張。その上で、IOCのアスリート委員会が、選手の振る舞いに関して適切な手段を取りまとめるべきだと述べた。

「アスリート委員会は、どのようにして五輪選手が五輪憲章に明記されている原則を品位を持って守ることができるのか、これまでと違う手段を探っている。彼らは世界中の選手らと対話しており、われわれはこの取り組みを全面的に支持している」

「それと同時に、いかなるときも五輪精神を尊重しなければならないということでアスリート委員会と合意している。これは、五輪憲章に記されている原則を守ることと、対立を生む可能性のあるデモとの区別をしなければならないということを意味する」

 膝つき行為は、米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の元QBコリン・キャパニック(Colin Kaepernick)が2016年、黒人やマイノリティーに対する警察の暴力に抗議するため、試合前の国歌演奏中に地面に片膝をついたことから有名になった。

 抗議行動がきっかけでNFLから事実上追放されているキャパニックやその賛同者は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領をはじめとした保守層から批判や侮辱を浴びた。

 しかしNFLは先週、「平和的な抗議」を認めると態度を一変。また、国際サッカー連盟(FIFA)はフロイドさんの事件に関する政治的なメッセージを発した選手への処分は「常識」で判断してほしいと各国リーグに促している。(c)AFP