【6月12日 AFP】6月11日は、4年に1度の代表サッカーの祭典、サッカーW杯南アフリカ大会(2010 World Cup)がアフリカで初めて開かれてからちょうど10年の節目となる。

 それから10年がたった南アフリカサッカーの「成績表」には、高評価の項目と低評価の項目が入り交じっている。国内リーグが盛り上がり、ほぼすべての会場が複数スポーツに活用されている一方で、代表チームの低迷や欧州5大リーグで活躍する選手の少なさ、協会内部の衝突といったマイナス面も生じている。

 ここでは、代表がメキシコとのW杯開幕戦を戦い、開催国として初めて決勝トーナメント進出を逃してから10年がたつ南アフリカサッカーの光と影を五つに分けて見ていこう。

■国内プレミアサッカーリーグの成功

 16チームで争う国内リーグは、富豪のアービン・コザ(Irvin Khoza)会長が効率的な運営を行っていることもあって、国内スポーツの中でも大きな成功を収めている。

 1996年に創設されたリーグは、数十年にわたって拙い経営が続き、いくつかのクラブは「車のトランクから運営されている」と言われるようなありさまだったが、現在はそうした時代は過去のものとなった。

 クラブには毎月250万ランド(約1600万円)が支払われ、リーグと三つのトーナメント大会の優勝賞金は総額3450万ランド(約2億2200万円)に上る。シーズンのハイライトであるカイザー・チーフス(Kaizer Chiefs)とオーランド・パイレーツ(Orlando Pirates)のソウェト(Soweto)ダービーでは、W杯決勝の舞台でもあったFNBスタジアム(FNB Stadium)に9万人が詰めかける。

■スタジアムの活用

 W杯で使用された10のスタジアムについては、すぐに「無用の長物」になるのではないかという懸念があったが、現在も9会場がサッカーかラグビーで活用され、不安は今のところ現実になっていない。

 唯一の例外はルステンブルク(Rustenburg)にあるロイヤル・バフォケン・スタジアム(Royal Bafokeng Stadium)で、ここはホームスタジアムとして使っていたチームが2部に降格した後、スタジアムを売ってケープタウンへ移転し、次のホームチームが決まらない状態が続いている。

■代表の低迷

 W杯以降のサッカー南アフリカ代表、通称「バファナ・バファナ(Bafana Bafana)」は、2019年のアフリカネーションズカップ(2019 The Africa Cup of Nations)で開催国エジプトから金星を挙げるなど、時折好パフォーマンスを見せるものの、全体としてはふがいないチームになっている。

 大陸内でのFIFAランキングは13番目で、W杯は2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会ともに予選敗退。ネーションズカップでさえ、過去5大会中2大会で本戦出場を逃している。

 母国開催のW杯前に行われたコロンビアとの壮行試合では、満員の9万人のファンが代表の戦いを見に訪れたが、今では公式戦で5000人を集めるのにも四苦八苦している。

 元カメルーン代表のスター選手、サミュエル・エトー(Samuel Eto'o)氏も昨年、「アフリカ最高の国内リーグがあるのに、代表がいまひとつなのは理解に苦しむ」と話していた。

■海外組の少なさ

 南アフリカサッカーの衰退をはっきり示しているのが、国外へ飛び出してイングランドやドイツ、イタリア、スペインの1部リーグでプレーする選手が一人もいないことで、5大リーグで南アフリカ選手がプレーしているのはフランス・リーグ1だけとなっている。

 数十年前にはCBのルーカス・ラデベ(Lucas Radebe)がプレミアリーグのリーズ・ユナイテッド(Leeds United)で主将を務め、他にもポルトガルやイングランドで活躍したベニー・マッカーシー(Benni McCarthy)、イングランドなどでプレーしたマーク・フィッシュ(Mark Fish)、ドイツで長くプレーしたデルロン・バックリー(Delron Buckley)らの海外組がいたが、そうした時代は遠い昔の話となった。

■サッカー協会会長の専横

 南アフリカは他の多くのアフリカ諸国と違い、サッカー協会(SAFA)が国内サッカーのすべてを統括しているわけではなく、国内リーグは別の団体が運営している。

 そして、スムーズな運営でファンの不満もほとんど出ていないリーグとは対照的に、政権与党の国会議員からSAFA会長になったダニー・ジョーダーン(Danny Jordaan)氏は、協会を「私物化している」と批判されることが多い。

 さらに会長はリーグのコザ会長を毛嫌いしていて、元職員によると「道を歩いていて石に足をぶつけたら、こんなところに石があるのはアービンのせいだ」と言うような仲だという。(c)AFP