【6月9日 AFP】中国の「万里の長城(Great Wall)」の北方区間は、侵略者を阻むためというより、一般の人々の移動を監視するために建設されたとする研究が9日、英考古学専門誌「アンティクイティ(Antiquity)」で発表された。

 現在も研究を続けるイスラエルの考古学者らが初めて、万里の長城の北方区間740キロ分の地図を作成したところ、これまでの仮説に疑問符を突き付ける知見が得られた。

 2年にわたって研究を率いたエルサレム・ヘブライ大学(Hebrew University of Jerusalem)のギデオン・シェルラッフラビ(Gideon Shelach-Lavi)氏は「われわれの研究以前には、ほとんどの人は万里の長城の目的はチンギスハン(Genghis Khan)の軍勢を阻むことにあると考えていた」と指摘。

 だが、北方区間の大部分は現在のモンゴル領内にあり、曲がりくねりながら谷間に走り、比較的低く、道の近くに建設されていることから、軍事的なものではない機能を持っていたことを示唆している。

 シェルラッフラビ氏は「どちらかといえば、おそらく税を課すために、人々と家畜の移動を監視するか阻止する目的があったと結論づけた」と話した。

 同氏によると、中世の寒冷期に人々はより温暖な南方の牧草地を目指していた可能性があるという。

 モンゴルの伝説的征服者にちなみ「チンギスハンの壁(Genghis Khan's Wall)」と呼ばれる北方区間の長城は11世紀から13世紀の間、たたいて固めた土で造られており、72の建造物が小規模な群をなして点在している。

 イスラエル、モンゴル、米国の研究者で構成された、シェルラッフラビ氏率いる研究チームは、遺跡を地図上に位置付けたり、年代の特定に役立つ遺物を見つけたりするために、ドローンや高精細の衛星画像、そして伝統的な考古学器具を利用。

 シェルラッフラビ氏によると、北方区間はこれまで現代の学者たちからほとんど見落とされていたという。(c)AFP