【6月9日 AFP】中国外務省の華春瑩(Hua Chunying)報道官は8日、「オーストラリアで最近、中国人やアジア人に対する多くの差別がある」と述べ、多数の在豪中国人が侮辱や危害を受けていると指摘した。また中国の文化観光省は先週5日、新型コロナウイルスに関連した差別が増加しているとしてオーストラリアに旅行しないよう勧告しており、両国の対立が深まっている。

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 華報道官は8日の定例会見で、「シドニーやメルボルン、ブリスベン(Brisbane)やオーストラリアのその他の都市で、中国人に対する差別的な意味合いを含んだ落書きが確認されている」と指摘。

 新型コロナウイルスの影響でオーストラリアは必要性の低い国際便の運航をすべて停止しており、再開のめども立っていないことから、中国政府の渡航中止勧告は象徴的な意味合いが大きい。

 オーストラリアのサイモン・バーミンガム(Simon Birmingham)貿易・観光・投資相は8日、公共ラジオABCに対して人種差別的な事案があったと認めた一方、「オーストラリアが旅行者にとって安全ではない渡航先であるとの考えは、精査に耐えられるものではないと思う」と述べた。

 豪最多の人口を抱えるニューサウスウェールズ(New South Wales)州の反差別委員会は先週、アジアをバックグラウンドに持つ人々への差別に関する問い合わせが増加していると報告した。

 委員会によると、通勤中や運動中、スーパーマーケットでの買い物中にマスクを着用していていじめられたり、つばを吐かれたり、嫌がらせを受けたりするなどの被害が報告されており、また車の窓を割られたり、車や私有地の建物に人種差別的な言葉が落書きされたりするなどの行為を受けたとの報告もあったという。

 豪政府は新型コロナウイルスの起源と感染拡大について独自調査を求めているが、中国政府は強く反発しており、両国間の対立深刻化は多方面に影響が広がっている。(c)AFP