【6月9日 AFP】「いても立ってもいられなかった」。新卒のアフリカ系米国人、モア・ポーラス(Moah Pollas)さん(21)は、米首都ワシントンで体系的な人種差別に反対する抗議デモに何日間も参加せずにはいられなかった理由を話した。場合によっては逮捕されるか、さらにひどい目に遭う懸念もあった。だが人種差別を受けてきた立場として、家の中でじっとしているわけにはいかなかったという。

 差別を受けたのは子どもの頃からだ。7歳か8歳の頃、校外学習の帰りに歩道を歩いていると、通り過ぎて行くスクールバスの窓から誰かが怒鳴った。

「お前の黒いケツをアフリカに持ち帰れよ!」と少年が叫び、バスに乗っている他の子どもたちがどっと笑った。

「その出来事を伝えた白人の女性の先生の反応の方がもっと傷ついた」と、ポーラスさんはAFPに語った。「先生が返したのは、くよくよしないで忘れてしまいなさいという言葉だった」

「あのときの経験は」と、大学で政治学を専攻したポーラスさんは続けた。「僕のその後の人生の中で、白人や有色人種の人々とのあらゆる経験に影響を与えている」

 カリブ海の島国ハイチの首都ポルトープランス生まれのポーラスさんは、2歳のときに家族と共に米国に移住した。政治的な迫害から逃れた両親が選んだのは、白人が圧倒的に多いカリフォルニア州バーバンク(Burbank)だった。

「自分の肌の色のせいで、人がより威嚇的で、より危険で、より暴力的な方法で僕を受け止めることを身をもって知りながら育った」

「黒人なら、24時間365日のペースで自身の行動に問題がないかチェックするようになる」と、ワシントン北東部にある、他の学生たちと暮らすシェアハウスの裏庭でAFPの取材に応じたポーラスさんは話した。

 米国で、黒人であることは「息が詰まる」と言う。

 通りを歩いている場合、「自分と同じ方向に歩いている白人がいれば、恐らく通行を妨げないようにする……できるだけ地面を見ようとするはずだ。なるべく静かにしていようとするだろう」。