【6月6日 AFP】(更新)ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は5日、米国の雇用改善についての記者会見で、先週警察に拘束された際に死亡した黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)さんにとって「素晴らしい日」となったと述べた。これを受け、トランプ氏の発言の真意をめぐる論争が巻き起こっている。

 フロイドさんは先月25日、米ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)で警察に取り押さえられた際に死亡。事件は、全米各地で警察の黒人に対する暴力に抗議するデモを巻き起こした。

 トランプ氏は、「われわれ皆が、先週起きたことを見た。あのようなことを起こしてはならない」と発言。「ジョージが今、天から見下ろしながら『米国で素晴らしいことが起こっている』と言っていることを願う」と述べ、「きょうは彼にとって素晴らしい日だ。皆にとって素晴らしい日だ。きょうは皆にとって素晴らしい日だ」と繰り返した。

 トランプ氏は、デモ参加者らが抗議している人種差別や警察の暴力、不平等への対応を怠ったとして多くの人から批判されているが、会見では「きょうは平等という点で素晴らしい日だ」とも述べた。

 この会見を受け、トランプ氏がなぜフロイドさんにとって素晴らしい日だと思ったのかをめぐる論争が起きた。

 記者会見は市場予想を裏切る改善を見せた雇用統計に関するものだったことから、トランプ氏の「素晴らしい日」発言は経済の好転とフロイドさんの事件を一緒くたにし、経済についてのフロイドさんの見解を代弁したものだったと捉えた人が多かった。

 だがホワイトハウス(White House)高官は、そうした解釈は「誤り」だと主張。トランプ氏がフロイドさんに言及する前に「法の下の平等な正義は、人種、肌の色、性別、信条に関係なく、全ての米国人が法執行機関から平等な扱いを受けることを意味しなければならない」と語っていたと指摘した。

 米労働省が同日発表した5月の雇用統計によると、就業者数は250万人増え、失業率は13.3%に改善。トランプ氏は、現政権の政策によりアフリカ系米国人の失業率などが改善したと主張したが、労働省の統計によれば黒人の失業率は16.8%で、前月からわずかに上昇した。

 トランプ氏の発言は物議を醸しており、11月の米大統領選で同氏の対抗馬となる見通しのジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領は「はっきり言って卑劣だ」と批判した。(c)AFP