【6月3日 AFP】米大統領選で民主党の候補指名が確実となったジョー・バイデン(Joe Biden)前副大統領(77)は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)によって、2か月以上も脇に追いやられてきた。だが、全米で繰り広げられる反人種差別デモによって、11月の選挙で戦うことになるドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領とは対照的なリーダーシップを発揮することで、再び注目を取り戻す機会を手にした。

「これは、まさに二つの異なるリーダーシップスキルに関する話だ」と指摘するのは、元民主党のオハイオ州上院議員で、首都ワシントンにあるアメリカン大学(American University)のエグゼクティブ・イン・レジデンス、カプリ・カファロ(Capri Cafaro)氏だ。

 カファロ氏は、「この二人の強さは非常に異なっている」「トランプ氏にとってリーダーシップとは力と同義であり、この文脈において力とは軍事力の行使と同義であると位置づけようとしている」と説明する。一方、バイデン氏にとってリーダーシップと力とは「いうなれば連携し耳を傾け、関わり合うといった『ソフトパワー』と同義となっている」と語った。

 スタンフォード大学(Stanford University)のハキム・ジェファーソン(Hakeem Jefferson)助教(政治学)は、大統領選において人種と正義の問題は常に注目されると指摘する。先週ミネソタ州で黒人男性のジョージ・フロイド(George Floyd)さん(46)が警察の拘束下で死亡し、これがきっかけとなって全米に拡大した抗議デモでトランプ氏は制圧を指示したが、このような問題が起こらなくても人種と正義に対する注目度は変わらないという。

「これは人種間の恐怖をかき立て、人種間の暴力をあおり、その行為に安心感を与えることで権力を手にしたトランプ氏が、現職の大統領であることによるものだ」とジェファーソン氏は指摘した。

 バイデン氏は2日、新型ウイルスのパンデミックの影響が米国に及んだ3月以降、初めて本格的な演説を行い、フロイドさんの死は「わが国に対する警鐘だ」と訴え、トランプ氏が米国を「古くからの憤りと新たな恐怖により引き裂かれた戦場」に変えたと非難した。

 米国初の黒人大統領となったバラク・オバマ(Barack Obama)氏の政権で8年間副大統領を務めたバイデン氏は、自身が次期大統領に選出されれば、米社会に根付く人種差別問題に取り組むと明言した。

 これに対しトランプ氏はツイッター(Twitter)に、「弱さでは無政府主義者や略奪者、悪党を打ちのめすことは決してできない。ジョーは人生において常に政治的に弱腰だ」「法と秩序だ」と、攻撃的な投稿を行った。

 カファロ氏は、今回の抗議デモは新型ウイルスの流行よりも選挙に大きな影響を与える可能性があると指摘する。これによりバイデン氏は、自分自身、経験、リーダーシップ、共感という点において、これまでのところトランプ氏とは全く違うということを示す機会を得ることができたと述べた。(c)AFP/Chris Lefkow and Elodie Cuzin