【6月21日 AFP】サバンナ上空を飛行中、パイロットが何かを見つけ機体を急旋回させた──アンテロープだ。最初は1頭しか見えなかったが、次第にこの広大な大地を移動する途中で群れからはぐれたとみられるアンテロープが何頭も確認できた。

 草原に細長い影を落としながらゆっくりと移動する3頭のヌビアキリンも見えた。ヌビアキリンの個体数は少なく、実際に目にする機会はあまりない。眼下にはこうした目を見張るような光景がずっと広がっていた。

 ここはアフリカの野生生物にとっての楽園の一つ、南スーダンだ。そして、アフリカ大陸の熱帯雨林と砂漠に挟まれた生物多様性ホットスポット(訳注 生物多様性が高く、破壊の危機にひんしている地域)でもある。

 南スーダンには、アフリカ最大のスッド(Sudd、湿地)と未開拓のサバンナがある。サバンナは白ナイル(White Nile)川の東からエチオピアまで続いており、毎年約120万頭のアンテロープがこの広大なエリアを移動する。その大きさは9万5000平方キロほどで、ハンガリーの国土とほぼ同じだ。

 南スーダンには、ライオンやゾウ、その他の絶滅危惧種も生息している。数十年におよぶ紛争や密猟による個体数減少の危機を生き延びてきた個体群だ。しかし、こうした脅威は今も続いている。その背景にあるのは、危険が伴い困難を極める保護活動だ。

 研究者やレンジャーは、反政府組織や武装密猟者と対峙(たいじ)する必要があり、時に政府の管理が行き届かず、無法地帯となっている場所での活動を強いられることもあるという。国立公園と保護区は、南スーダンの約15%を占めている。法律上は守られていることになっているが、野生生物当局の予算は限られており、監視も十分とは言えない状況だ。

 6年以上続き、40万人以上が犠牲となった内戦がようやく終結したばかりの同国にとって、野生生物の保護は最優先事項ではない。それでも、野生動物がもたらす恩恵については、政府もしっかりと認識をしている。

 アルフレッド・アクウォチ(Alfred Akwoch)前観光自然保護相は、同国の経済状況はぼろぼろで石油に依存しきっていることを指摘しながら、今後は保全管理やエコツーリズムなどによる雇用創出や収益が非常に重要になると話す。

 アクウォチ氏は「それ(野生生物)は何をもたらすでしょうか?観光客を呼び寄せ…彼らはお金を落とし、そのお金は開発に使用されるのです」と語った。(c)AFP