【6月3日 東方新報】新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に向けた闘いの中で、数々の感動的な記録を後世のために各地の博物館に収集する活動が始まっている。感染まん延期間は閉館を余儀なくされていた博物館も徐々に運営を正常化。先月18日の国際博物館デーには新型コロナウイルス感染症テーマの展示が集中している。

 中国で最も感染が猛威を振るった湖北省(Hubei)では5月中旬の段階で、およそ2万点の物証が各地博物館に収集されている。

 湖北省博物館(Hubei Provincial Museum)は、新型コロナウイルス感染者の隔離病院施設であった雷神山医院を今回の「武漢戦疫」の重点地として、2月からここでおよそ50点以上の実物資料を収集。具体的には、雷神病医院の王行環(Wang Xinghuan)医院長の勤務IDカードや記念章、看護婦が院内で利用していた自作の医療ポーチ、最初の退院者や100人目の退院者についてのリポートなどだ。さらに100枚の肺部のCT画像や、新型コロナウイルス軽症者、重症者、回復者の肺の状態を比較する医学臨床的資料や、湖北省医療支援隊の隊旗、署名入り防護服、医療チームの決意書や手紙など、当時の医療従事者の心情を垣間見る資料も集めた。目下1200点の「新型コロナウイルスとの闘い」の証しが集められているという。

 3月中旬からは、武漢革命博物館も「抗疫実物資料」を社会に対して募集した。新型コロナウイルス感染のさなか、武漢の仮設病院で急性胆のう炎手術を行った中国医学科学院名誉院長で内科医の張伯礼(Zhang Boli)医師のサイン入り防護服や、中国人民解放軍軍事科学院(PLA Academy of Military Science)科学研究チームのトップとして感染防止の最前線に立った陳微(Chen Wei)少将の署名が入った最初の封書、重症八仙の異名をつけられた名医8人のサイン入りシャツ、武昌仮設病院の王建英(Wang Jianying)看護師長の業務日誌、福建医療チームが滞在していたホテル宛てに書いた感謝の手紙などが寄せられた。目下、9600点以上の「抗疫物証」が収集されている。

 襄陽市博物館(Xiangyang Museum)は4月4日から同様に、新型コロナウイルス感染症関連の展示品の募集を開始。医療従事者たちの意気込みを書いた「請戦書」や、寧夏医療支援チームの作業服、市の赤十字会(紅十字)からの寄贈リスト、地元幼稚園に提供された「抗疫物語」シリーズ、地元老年大学の張玉勤(Zhang Yuqin)学員が寄付した切り絵作品などが収蔵された。

 こうした動きは全国で展開され、江蘇省(Jiangsu)南京市(Nanjing)の南京博物院(Nanjing Museum)では国家文物局と江蘇省人民政府の主催、江蘇省文化観光庁、江蘇省文物局、中国は博物館協会の共催で、2020年5・18国際博物館デー記念展示として、新型コロナウイルス感染症展示が開幕。新型コロナウイルス感染症との戦の記憶をとどめたサイン入り防護服はじめ、貴重な「抗戦資料」が公開された。2003年春のSARSの発生源地とされる広東省(Guangdong)仏山市(Foshan)の南海博物館(Nanhai Museum)でも同様のイベント展示が18日にスタート。新型コロナウイルス感染症との戦に参加した医療チーム、ボランティア、行動制限中の市民の生活を支えた宅配業者や配達員たちの活動を記録する歴史的な写真や記念の品などを展示している。  

 中国のほとんどの地域は日常生活に戻っているが、ウイルスとの闘いの日々に得た苦難の経験、教訓は忘れないようにするためにもこうした展示は意義があると参観者から支持されている。 (c)東方新報/AFPBB News