■「私たちはまだ医師ではない」

 ロシアで確認された新型コロナウイルスの感染者数は毎日容赦なく増え続け、6月1日の時点で40万人を上回っている。全国で多数のベッドが追加され、各病院に医療従事者を配置する措置も取られている。

 だが多くの学生は、宿舎の割り当ても完全な防護装備の支給も保証されない状況に置かれたくないと反発している。

 学生たちは退学などの報復処分を恐れて、匿名を条件にAFPの取材に応じた。アレクサンドラさんは「私たちはまだ医師ではない」と述べる。「まだ役に立たないどころか、かえって感染を広げる恐れさえある」

 野党勢力の指導者アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏と密接な労働組合「医師連合(Alliance of Doctors)」の広報を担当するイワン・コノバロフ(Ivan Konovalov)氏は、当局は医療従事者の不足を医学生で埋めようとしていると指摘する。

■医師不足

 背景には「ここ数年の医療制度改革のせいで多くの医師が辞めている」ことがある。この問題は複数の政府機関も警告しており、監督局は医療部門の「最適化」(削減を意味するえん曲表現)が、新型ウイルス流行下のロシアの医療を弱体化させたと指摘している。

 だがロシアで求められているのは医師の増員であって、削減ではない。ロシアでは軽症者のためのさまざまな臨時施設が設置されており、医療従事者が必要とされている。

 医療関係者が保管している名簿によると、これまでに新型ウイルス患者の治療に当たった医師100人以上が死亡している。コノバロフ氏は、このような困難な状況下でも、医学生に支援を求めることは解決策にはならないという。「最終学年の医学生でさえ、このような状況下で働いた経験はない」 (c)AFP/Marina KORENEVA / Victoria LOGUINOVA-YAKOVLEVA