【5月25日 AFP】スティーブン・ジェラード(Steven Gerrard)氏によれば、リバプール(Liverpool FC)は「奇跡を信じて」はいなかった。ジェイミー・キャラガー(Jamie Carragher)氏も、「夢がごみになった」と思った。ところが15年前の5月25日、ラファエル・ベニテス(Rafael Benitez)監督率いるチームはサッカー史に残る逆転劇を完遂し、ACミラン(AC Milan)を破って欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League)制覇を成し遂げた。

 このシーズンのリバプールは、準々決勝でイタリア・セリエAの強豪ユベントス(Juventus)を下すと、準決勝では同じプレミアリーグのチェルシー(Chelsea)に競り勝ち、イスタンブールでの決勝へたどり着いていた。それでもチームは下馬評不利の状況でキックオフを迎え、0-3とミランに完全に圧倒されて前半を終えた。

 ところが1985年のヘイゼルの悲劇(Heysel Stadium Disaster)以降、欧州最高峰の大会で初の決勝に進出したチームを後押ししようと駆けつけた4万人のサポーターが大声援を送る中、最後はPK戦を制してクラブ史上5回目の欧州制覇を達成した。

 2000年代のミランは、カルロ・アンチェロッティ(Carlo Ancelotti)監督が率いた2003年と2005年、そして2007年にチャンピオンズリーグの決勝に進出し、この2005年以外は優勝を果たしている。2007年はリバプールへの雪辱を果たしての優勝だった。

 それでもアンチェロッティ監督はこの三つのチームについて「技術的には、2007年のチームは2005年のチームよりも下だった。決勝の内容という意味では、2005年は歴代ベストチームの一つだろう」「2003年のチームよりも強かった」と話している。

 ジェラード氏も自伝の中で「アンドレア・ピルロ(Andrea Pirlo)とクラレンス・セードルフ(Clarence Seedorf)、カカ(Kaka)は質が高く、われわれをズタズタにした」と振り返っている。キャラガー氏も自伝で「夢がごみに変わった」「試合のことはもう考えられなかった。家族や友人に申し訳ないという思いだけだった」と話している。

 アタトゥルク・オリンピヤト・スタジアム(Ataturk Olympic Stadium)に集まったリバプールのサポーターは、ハーフタイムに「You'll Never Walk Alone」を厳かに歌ってチームを鼓舞した。それでもジェラード氏は「あれで奮い立ったが、おかげで奇跡を信じられたかというと、それは違うと思う」と告白している。

 しかし、システム変更と選手交代も駆使しながら、チームは後半の約6分間で一気に3点を決めて追いつき、相手の攻勢をしのぎながらなんとかPK戦に持ち込むと、最後は2年前のユベントスとの決勝で最後のPKを決めていたミランのエース、アンドリー・シェフチェンコ(Andriy Shevchenko)のキックをGKイェルジ・デュデク(Jerzy Dudek)が止め、リバプールの勝利が決まった。

 ジェラード氏は「間違っていたら申し訳ないが、あれ以上のチャンピオンズリーグ決勝があるだろうか」「彼らの方が力は上だったが、それでも勝ったのはわれわれだった」と話している。(c)AFP/Jed Court