【5月22日 AFP】(更新、写真追加)新型コロナウイルスの流行を受けて延期されていた中国の全国人民代表大会(National People's Congress、全人代、国会に相当)が22日に開幕し、中国政府に対する「反逆、分離、扇動、転覆」を禁止する「国家安全法」の香港への導入を検討する議案が提出された。国営新華社(Xinhua)通信が伝えた。

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 国家安全法が導入されれば、中国が香港の支配を強化し、市民の自由がさらに損なわれると懸念されている。香港の民主派議員や活動家は「香港の終わりだ」と反発。米国も、香港の自由への攻撃だとして中国政府を非難している。

 香港基本法は第23条で、香港においては香港政府が独自に国家安全法を制定すると定めている。ただ、「一国二制度」の下で高度な自治を認められてきた香港では、同法が市民権を損なうとの恐れが人々の間に根強く、第23条が施行されたことはこれまで一度もない。2003年に制定に向けた動きがあったが、50万人が街頭に繰り出して抗議し、撤回された経緯がある。

 香港では昨年、時に暴力をともなう大規模な抗議デモが7か月続いた。これを受け中国政府は、国家安全に関する新たな法律の制定を望む姿勢を明確にしていた。

 全人代の張業遂(Zhang Yesui)報道官は21日、全人代初日の22日に国家安全法の導入について審議すると発表し、同法が香港の「法執行の仕組み」を強化するとの見解を示した。

 同報道官によると、全人代は国家安全法導入について、香港の高度な自治と自由市場の基盤である「一国二制度を改善し維持するために必要」と考えているという。

 この発表を受けて、米国は21日、香港の自治権を尊重するよう中国に要請した。

 モーガン・オータガス(Morgan Ortagus)米国務省報道官は、「香港の民意を反映していない国家安全法を押しつけるいかなる試みも、極めて大きな不安定化要因となり、米国と国際社会からの強い非難を浴びることになるだろう」と警告。「『中英共同宣言』に記された責任と義務を尊重するよう、中国政府に強く求める。これには、香港が『高度な自治』を享受し、香港の人々が人権と基本的な自由を享受することも含まれる」と述べた。(c)AFP