【5月22日 AFP】米連邦最高裁が1973年に女性の人工妊娠中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド(Roe v. Wade)判決」の裁判で原告だった女性が、後に歴史的なこの判決を批判する立場に転じたのは、中絶反対派から金銭を支払われたためだと告白するドキュメンタリー番組が22日、米国で放送される。

 この女性は、2017年に69歳で死去したノーマ・マコービー(Norma McCorvey)さん。亡くなる数か月前にインタビューを受けていた。

 マコービーさんはテキサス州で人工中絶を受けられなかったことをきっかけに、中絶を禁止する州法は違憲だとして、1969年に匿名で訴訟を起こした。ジェーン・ロー(Jane Roe)という仮名の原告として最高裁まで争い、1973年1月22日に合法的な中絶の権利を女性に認める最高裁判決を勝ち取った。

 ところが、1990年代に入ってマコービーさんは熱心な中絶反対派に転身。プロテスタント福音派への改宗を経て、最終的にカトリック教徒となった。

 この経緯についてマコービーさんは、米有料テレビ局FXで22日放送予定のドキュメンタリー番組「AKA Jane Roe(またの名はジェーン・ロー)」の中で、金銭を受け取って中絶反対運動の「顔」になったと告白している。

 放送を前に米メディアに公開された抜粋映像の中で、「あれは利害の一致だったと思う」とマコービーさんは回顧している。「私は彼らからお金を受け取り、彼らは私をカメラの前に立たせて、何を言うべきか指示した。そういうことだ」「私は、立役者だった」

 番組ディレクターのニック・スウィーニー(Nick Sweeny)氏が、「全ては芝居だったということか」と尋ねると、マコービーさんは「ええ。そして、私はうまく演じた。私は良い女優なの──もちろん今は演技じゃないけれど」と答えた。

 このインタビューについて、マコービーさんは「臨終の告白」と表現。「若い女性が中絶を希望したっていい。私の知ったことじゃない。それが選択というものだ。あなた次第だ」と語っている。

 ロー対ウェイド判決以降、中絶の権利をめぐる問題は米国の世論を二分している。米国内には宗教上の理由で中絶に反対する人が多く、近年は一部の州で中絶を厳しく制限する州法が議会を通過して法廷闘争が起き、再び最高裁の判断を仰ぐ展開となっている。(c)AFP