【5月20日 AFP】ネパール政府は18日の閣議で、インドとの領有権問題の火種となっている地域を領土に含む新しい地図を発表することを決定した。政府関係者らは、新地図は戦略的に重要な領土を含んでいると述べている。

 シバ・マヤ・トゥンバーンヘ(Shiva Maya Tumbahangphe)法務相がAFPに語ったところによると、新地図にはリプレク(Lipu Lekh)地域と、カラパニ(Kalapani)およびリンピヤドゥラ(Limpiyadhura)の一部地域が含まれている。これらの地域一帯は計300平方キロメートル以上の広さで、インドおよび中国と国境を接する重要地域と考えられている。

 今月に入り、インドが北部ウッタラカンド(Uttarakhand)州でネパールとの係争地であるリプレク峠に至る全長80キロの道路を開通させて以降、ネパール各地では抗議デモが相次いでいる。

 ネパール側はカリ川(Kali River)に沿って国境を定めた1816年の条約に基づき、リプレク峠の領有権を主張しているが、両国はカリ川の水源について合意していないことから領土問題が生じている。

 トゥンバーンヘ法務相は新地図の発表と平行し、「ネパールは国境問題を解決するために外交ルートを通じてインドとの対話を始める」と語った。

 リプレクと隣接するカラパニ地域には1962年のインドと中国による国境紛争以降、インド軍が配備されているが、ネパールはカラパニ地域の領有権を主張している。

 インドとネパールは両国そろってカラパニ地域とリプレクを自国の政治地図に含めてきたが、ネパールの地図にはこれまでリンピヤドゥラは含まれていなかった。

 国境問題専門家のブディ・ナラヤン・シュレスタ(Buddyhi Narayan Shrestha)氏は、「それはネパールが最初に地図を作成した1970年代に論争となった問題だが、その際、リンピヤドゥラ地域はインドとの協議の後に地図に含めるとの決定が下された」と述べる。

 ネパール側は、インドの新道路建設を「一方的な行為」と非難している。一方、インド側は新道路について、「完全にインドの領土内にある」と主張し続けている。

 ネパールはこれ以降、カラパニ付近に治安部隊を配備している。

 インド軍のM・M・ナラバニ(M.M. Naravane)陸軍参謀長は15日、ネパールの反応について「どこか他からの要請」を受けているのだろうと述べ、中国の関与をほのめかした。(c)AFP