【5月16日 AFP】ブラジルのネルソン・タイシュ(Nelson Teich)保健相(62)が15日、就任からわずか数週間で辞任を表明した。当局者によると、深刻化する新型コロナウイルス危機への対応をめぐり、ジャイル・ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領と「見解の不一致」があったことが理由だという。

 がん専門医のタイシュ氏は、ボルソナロ氏が前任のルイス・エンリケ・マンデッタ(Luiz Henrique Mandetta)氏を解任した翌日の4月17日、保健相に就任した。

 マンデッタ氏はウイルスの感染拡大防止策として外出制限を推進したが、ボルソナロ氏はこれを声高に批判し、両氏は衝突していた。

 ボルソナロ氏は先週、美容院とスポーツジムを「必要不可欠なサービス」として営業再開を認めると発表したが、タイシュ氏はそれについて相談を受けていなかった。

 タイシュ氏とボルソナロ氏は新型コロナ治療で抗マラリア薬のクロロキンを使用することをめぐっても意見が対立し、これが辞任の決め手になったと報じられている。

 ボルソナロ氏は、比較されることの多いドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領と同様、クロロキンを有望な治療法とみている。しかし、クロロキンの有効性については疑問を呈する研究もあり、その安全性を懸念する声が上がっている。

 タイシュ氏辞任の報道を受け、ブラジル各地でボルソナロ氏に対する抗議行動が発生した。

 ブラジルは新型コロナ流行の影響が最も深刻な国の一つで、死者数は1万4000人近くまで急増している。(c)AFP