【5月15日 AFP】中国政府は15日、香港の大学入試の歴史の試験問題について、日本の中国統治を分析評価する出題があったとして出題者を強く叱責した。「一国二制度」の下で高度な自治が認められている香港の「教育の自由」をめぐり、議論が再燃している。

 アジアでもトップクラスの教育機関を複数擁する香港では、長引く民主派デモで不安定な政治情勢が続く中、学校や大学が思想闘争の最前線となっている。

 中国外務省と国営メディアは、歴史科目の試験問題に、1900~45年の日本による中国の占領統治について「弊害よりも恩恵の方が大きかった」かどうかを判断させる設問があったと激しく非難した。

 中国外務省の出先機関である駐香港特別行政区特派員公署は、フェイスブック(Facebook)の公式ページに「香港の教育部門は、屋根のない鶏小屋になってはならない」と投稿した。

 また、共産党機関紙・人民日報(People's Daily)系の環球時報(Global Times)は15日、「香港の(大学入試)出題は学生を反逆者にする」と報じた。

 中国本土の学校や大学では共産党の掲げる路線からの逸脱がほとんど許されていないのに対し、特別行政区の香港の教育機関には討論や分析を推奨するより自由な風潮がある。

 だが、昨年の民主派デモを受けて、中国政府は香港の教育制度を新たな標的としつつある。「鶏小屋」の比喩は、親中派の林鄭月娥(キャリー・ラム、Carrie Lam)行政長官が先週、中等学校の科目で生徒の批判的思考力を育成する「リベラル・スタディーズ」が香港の民主派デモをあおったとして警鐘を鳴らした際に使用していた。(c)AFP