【5月10日 AFP】新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)対策に集中できるよう世界各地の紛争で停戦を呼び掛ける国連安全保障理事会(UN Security Council)の決議案に8日、米国が異議を唱え、採決が見送られた。

 外交筋がAFPに語ったところによると、米国は決議案にあった世界保健機関(WHO)に関する文言に反発したという。別の情報筋によると、米国はパンデミック対策での国際協力における「透明性」の必要性を強調した当初の決議案に戻ることを望んでいる。停戦決議案をめぐっては3月以降、安保理で緊迫した交渉が続いている。

 フランスとチュニジアが提出した決議案では、各国政府がパンデミック対策に集中できるよう各地の紛争地帯での停戦を求めていた。また「すべての国および専門保健機関を含む国連システムの全機関、およびその他の関連する国際的、地域的、小地域的な組織を支援することが急務だ」と強調されていた。WHOを名指しせずに示唆するにとどめたこの決議案は、米中両国から支持を得るための妥協策だとみられていた。

 だが米国務省当局者は8日、「安保理は停戦支援に限定した決議を進めるか、あるいは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する中で透明性と説明責任に関して加盟各国が決意を新たにする必要性を十分訴える決議のどちらかを進めるべきだというのがわれわれの見解だ」と述べた。

 米国はWHOの最大の資金拠出国だが、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は先月、WHOが中国を守るために新型コロナウイルス流行の深刻さを軽視しているとして、拠出の停止を表明した。(c)AFP