【5月5日 AFP】米国のマイク・ポンぺオ(Mike Pompeo)国務長官は、新型コロナウイルスの大流行をめぐり、率先して対中強硬路線を貫いている。中国国営メディアからは「狂気の沙汰」と非難される一方で、米国の保守派からは称賛されている。

 ポンペオ氏は、昨年新型ウイルスが最初に発生した中国・武漢(Wuhan)にあるウイルス研究所からこの感染症が広がったとする説を主流言説に持ち上げた筆頭格の人物だ。

 同氏は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の政権下ではまれな偉業を成しえてもいる。その偉業とは、気まぐれな大統領と良い関係を保ち続けるということだ。トランプ氏が最側近のポンペオ氏について、批判的な言葉を発したという話は一つも知られていない。

 米政府のアナリストらは、トランプ大統領への忠誠が、ポンペオ氏の絶対原則であるとみている。ポンペオ氏の政界における将来は、トランプ氏に寄り添い、11月の大統領選挙で再選を助けることに懸かっている。

 米シンクタンク「カーネギー国際平和財団(Carnegie Endowment for International Peace)」の研究員で、かつて共和党政権でアジア担当の上級顧問を務めたダグラス・パール(Douglas Paal)氏は、ポンペオ氏がパンデミック(世界的な大流行)における中国の役割に焦点を置くことは、トランプ大統領の再選戦略に合致していると指摘。

「経済が落ち込み、株式市場が落ち込み、では選挙で他に何を持ち出せばいいか? では中国をたたこう、となる」というのが、パール氏の見方だ。

 かつて米中央情報局(CIA)の長官を務めたポンペオ氏は3日のABCのインタビューで新型ウイルスについて、大半の科学者らが指摘している生鮮市場からではなく、武漢の研究所から発生したことを示す「大きな証拠」があると明言。

「思い出してほしい、中国には世界を感染させた過去があり、基準以下の研究所を運営してきた過去がある」と述べた。

 中国国営メディアは4日、北朝鮮が用いる乱暴な言い回しを想起させる厳しい言葉で応酬。ポンペオ氏の発言を「狂気の沙汰」と非難し、「邪悪なポンペオ氏、気まぐれに毒を吐き出し、うそを広める」との見出しで論評を掲載した。

 この論評では、世界保健機関(WHO)のマイク・ライアン(Mike Ryan)氏と、米コロンビア大学(Columbia University)のウイルス学者のイアン・リプキン(Ian Lipkin)氏による、新型ウイルスは自然起源であり、人工ウイルスでも、ある研究所から流出したものでもないとする指摘を引用。

 その上で、「米国の政治家らによる、こうした誤った理不尽な発言は、『証拠は存在』しないということをますます多くの人に対して明示している」と論じている。

「いわゆる『武漢の研究所から流出したウイルス』という妄言は全くもって完全なるうそである。米国の政治家らは、自国内でのウイルス感染対策が紛糾しており、責任を転嫁して票をだまし取り、中国を抑えようと躍起になっている」と訴えた。

 4日にはWHOも、新型ウイルスが研究所から発生したとの証拠はないとする考えを表明したが、ポンペオ氏はトランプ氏と共に、WHOを攻撃している。

 ポンペオ氏は今年、出身地であり共和党支持層の厚いカンザス州から上院議員に立候補することを辞退して、識者らを驚かせた。上院議員になれば、仮にトランプ氏が選挙で勝てなくても、政界に居場所を確保できるからだ。

 ポンペオ氏は、2024年の大統領選で自ら立候補するという野心を抱いているとの見方が広がっている。(c)AFP/Shaun TANDON