■多くの臆測を呼ぶのはなぜか?

 北朝鮮は異常なほど不透明な国家で、経済成長率も国家機密として扱われている。

 北朝鮮ウオッチャーや平壌駐在の外交官でさえ、内部の動向についての手掛かりについて、しっかりと統制されている国営メディアを大いに当てにしている。

 秘密主義は権力者周辺のあらゆる事柄に関して徹底され、情報の欠如は臆測が無制限に広がる余地を生む。

 金氏は、4月11日の朝鮮労働党政治局会議を主宰する姿が報じられたが、その4日後に開催された、北朝鮮の政治日程で最も重要な日である故金日成国家主席の生誕日を祝う記念式典に姿を見せず、金氏の所在が俎上(そじょう)に載せられた。

 主に脱北者らが運営する韓国の北朝鮮情勢サイト「デイリーNK(Daily NK)」は、金氏が心臓血管手術を受け、平安北道(North Phyongan Province)の別荘で療養中だと報じた。

 その直後、米CNNは匿名の米当局者の話として、米国政府は金氏が術後に「重体」となったとの情報を「注視している」と伝えた。

 日本では、金氏が「植物状態」にあるとさえ報じられた。

 だがその後、韓国の文正仁(ムン・ジョンイン、Moon Chung-in)大統領統一外交安保特別補佐官が、金氏は「健在」だとCNNテレビに語り、トランプ米大統領も、金氏の健康状態悪化や死亡説についての報道を一蹴した。

 米国政府の元北朝鮮アナリスト、レイチェル・ミニョン・イ(Rachel Minyoung Lee)氏はAFPに対し、「今回の件は、北朝鮮についての根拠のないうわさに対し、いかにわれわれが無防備であるかを思い出させた」「われわれには、しっかりしたスパイ技術を用いて北朝鮮を分析できるより多くの専門家が必要だ」と話している。(c)AFP