【5月2日 AFP】米ニューヨーク・ブルックリン(Brooklyn)で、家賃支払い日となる5月1日の数日前のことだ。住居ビル管理者がショーン・ライリー(Sean Reilly)さん(25)の部屋のドアをたたき、前月の家賃支払いを求めていた。

 米国で新型コロナウイルス流行の中心地となっているニューヨーク州では1日、家賃の支払い免除を求めて大勢がデモに参加した。ライリーさんも、その一人だ。新型ウイルスコロナの感染拡大による失業者が急増し、国内の多くの人が今も外出を制限される中、大勢の人々が今、家賃の支払いをめぐって苦境に立たされている。

 ブルックリンのクラウンハイツ(Crown Heights)地区にあるエレベーターのないアパートでは、ライリーさんや他の居住者らが横断幕を掲げた。ニューヨーク州の州都オールバニ(Albany)では、複数の車がアンドルー・クオモ(Andrew Cuomo)知事の公邸を囲み、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)を維持しながら抗議を行った。

 新型ウイルスによる感染者・死者ともに世界最多(感染者100万人以上、死者6万4000人以上)の米国では、各地で同様の運動が行われた。

 デモは、労働者の祭典「メーデー」に合わせて実施された。米ニューヨーク州で一斉に行われた賃貸居住者による抗議としては、家賃削減を求めて大規模ストが繰り広げられた1930年代以降で最大とみられている。

 この運動を主導している居住者の支持団体、「ハウジング・ジャスティス・フォー・オール(Housing Justice for All)」の推計値によれば、州内では100棟のアパートでおよそ1万2000人もの個人居住者が同日のストに参加した。

 米最大の社会主義団体「米民主的社会主義者(DSA)」のメンバーであるライリーさんは、ルームメート4人と月3100ドル(約33万円)の家賃でアパートを借りている。影響を恐れ詳細は明かさなかったが、ライリーさんには今も仕事がある。しかし多くの同僚が職を失い、次は自分の番なのではないかと恐れていると語る。

 賃貸物件の紹介サービス「レントカフェ(RentCafe)」によると、ニューヨーク州の居住者860万人のうち、3分の2近くが賃貸で暮らしている。寝室が2部屋あるアパートの平均家賃は、クイーンズ(Queens)区では2500ドル(約27万円)、マンハッタン(Manhattan)区では4000ドル(約43万円)以上になるという。

 ブルックリンで大家・仲介業を展開するカルマン・ジマーマン(Kalman Zimmerman)氏はAFPに対し、管理者側もまた固定資産税や住宅ローンの支払いに苦労しているとし、「(家賃を)免除するのは非常に大変」だと指摘。「もし政府が大家の納税やローンの支払いを免除してくれるのであれば、家賃の支払い免除を全面的に支持する」と主張した。(c)AFP/Maggy DONALDSON