【5月2日 AFP】極地の氷冠から水深1万メートルのマリアナ海溝(Mariana Trench)まで、家庭の洗濯機から吐き出された微小な合成繊維片(マイクロファイバー)が海洋の至る所を汚染している──。

 世界は近年、使い捨てプラスチック製品の弊害に目覚め、結果として数十の国でその使用を制限・禁止する法律が制定され始めている。プラスチックごみは大量に海に流入し、ウミガメから海鳥のアジサシまでのさまざまな野生生物に絡み付いたり、死んだクラゲのように海中を浮遊したりする。

 だが、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの顕微鏡でしか見えないほどの微小片による海洋汚染については、その主な発生源がこれまであまり注目されてこなかったと専門家らは指摘している。

 英プリマス大学(University of Plymouth)の研究者、イモージェン・ナッパー(Imogen Napper)氏は、大半の人は気付いていないが「大半の衣服はプラスチックでできている」と話す。

 AFPの取材でナッパー氏は、「衣類は定期的に洗濯されるが、洗濯1回につき膨大な数の繊維片が剥がれ落ちる」「これが自然環境に流出するプラスチック汚染の主要な発生源の一つとなっていることが考えられる」と指摘した。

 英エレン・マッカーサー財団(Ellen MacArthur Foundation)の2015年の報告書によると、世界の繊維生産量は年間5300万トンに上り、毎年50万トンのマイクロファイバーが河川に流出していることが推定されるという。また、海洋保護活動組織のオーシャンワイズ(Ocean Wise)も、米国やカナダの平均的な家庭からは毎年、5億片以上のマイクロファイバーが自然環境に流出していると発表している。

 海洋生物学者らは、プラスチック製のポリ袋がウミガメにとって有害なのと同様に、マイクロプラスチックが微小な海洋生物に害を及ぼしていることはほぼ確実だと指摘する。