【4月29日 AFP】中国で最初に新型コロナウイルスの流行が発生して以来、患者の排せつ物の中にはっきりとウイルスの存在が認められることがいくつかの研究で明らかになっている。下水の検査は今や感染拡大の追跡にとって重要なカギであり、流行の第2波が危惧される中で貴重な早期警報システムにもなるかもしれない。

 正式名「SARS-CoV-2」と呼ばれる新型ウイルスの遺伝学的痕跡は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行している世界各地のトイレや下水道、下水処理施設などの排水で確認されている。イタリア高等保健研究所(ISS)の水質管理主任ルカ・ルセンティーニ(Luca Lucentini)氏によると、ウイルスのこうした遺伝学的痕跡自体には公衆衛生的なリスクはない。

 また排せつ物内にウイルスが存在しても、そこから直ちに感染が生じ得ることを意味するわけではない。だが、排水と接触すれば衛生的にリスクがある可能性を、オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)の研究者らが英医学誌ランセット(The Lancet)に掲載された論文で警告している。

 RIVMは3月末、オランダの首都アムステルダムで排水内から新型ウイルスの遺伝物質を検出したと報告している。RIVMの2人の研究者らは、排水は「人の間をウイルスが循環しているのかどうかを示す」貴重な情報源になり得ると述べている。

 仏ソルボンヌ大学(Sorbonne University)のウイルス学者バンサン・マレシャル(Vincent Marechal)教授は、排水による「ウイルス追跡」さえ可能かもしれないとの見解を示した。

 マレシャル教授のチームはパリの排水を対象にした研究で、新型ウイルスによる「死者の増加にはっきりと続く形で、排水内のウイルス遺伝物質のレベルが上昇した」ことを突き止めた。まだ他の科学者による実証はないが、流行第2波への備えとしてフランス全土をカバーする排水警告システムの構築をマレシャル教授は提唱している。

 新型ウイルスの感染者の多くが軽症または無症状であることを考えると、排水警告システムがあれば、流行がまだ及んでいない地域で最初の感染者が確認される前、あるいは流行が沈静化した地域で再流行の感染者第1号が確認される前にウイルスの存在を把握することが可能だと同教授は主張している。

 他のウイルスでは、排水を利用した警告システムが機能した前例がある。2018年に発表された研究によると、2013年にはイスラエルで排水からポリオウイルスが検出されたことで、早めにワクチン接種を開始でき、ポリオにかかりやすい幼い子どもたちに後遺症のまひが残った例が一つもなかった。(c)AFP/Amélie BOTTOLLIER-DEPOIS