【4月27日 東方新報】新型コロナウイルス感染症対策をめぐり、中国とロシアが「固い結束」をアピールしている。その狙いは、米国へのけん制だ。

 中国の習近平(Xi Jinping)国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は16日夜、電話会談を行った。感染症対策で互いに医療支援を受けていることを感謝しつつ、最も強調したのは米国による「レッテル貼り」への反論だった。

 米国ではここ数日、「新型ウイルスは、中国・湖北省(Hubei)武漢市(Wuhan)の中国科学院武漢ウイルス研究所から流出した疑いが強まっている」と繰り返し報道され、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が「政府として大規模な調査を進めている」と表明。今や世界で最も感染者が多い国となった米国では、適切な対策を怠ったとして政権への批判が高まっている。秋の大統領選への影響を恐れるトランプ氏が中国へ問題の矛先を向けるため、「ウイルス流出説」を広めようとしているといわれている。

 これに対し、電話会談で習主席は「新型ウイルスをめぐる政治化や決めつけは、国際協力の助けにならない」と強調。プーチン大統領も「ウイルスの発生源をめぐって中国に泥を塗るやり方は受け入れられない」と応じ、中ロ両国が「手を携えて世界の公衆衛生の安全を守る」とアピールした。

 中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄をはじめ、米国と政治・軍事的対立が続くロシア。米国との貿易戦争が長期化している中国。『三国志』の世界さながらに、超大国・米国に対し中ロが結束して対抗しようとしている。

 その一方で、中国とロシアの国境では今、厳戒態勢が敷かれている。ロシアと国境を接する黒竜江省(Heilongjiang)綏芬河市(Suifenhe)では3月27日から4月13日にかけ、ロシアから帰国した中国人ら322人が新型ウイルスに感染していることが確認された。3月上旬で国内の感染症流行を抑え込むことができた中国ではショックが大きく、「ウイルスの逆流」と呼ばれている。

 綏芬河市では既に一般市民の出入国は制限する措置を取ったが、ロシア極東地区の野菜供給は綏芬河ルートの輸入に大きく依存しており、輸送の完全制限はできない。綏芬河市では、突貫工事で感染者を集中治療する仮設病院を建設。黒竜江省はさらに「ロシアからの密入国者を発見・通報すれば3000元(約4万5000円)、捕まえたら5000元(約7万5600円)を与える」と懸賞金もかけた。

 中国政府は、3月から開催を延期している全国人民代表大会(国会に相当)を5月にも開く方向で調整しているといわれる。再び感染症が国内で広がればその実現も難しくなる。米国との駆け引き、国内の感染抑制と、中国でウイルスをめぐる問題はまだまだ続いている。(c)東方新報/AFPBB News