【4月22日 東方新報】中国サッカー・スーパーリーグの強豪・広州恒大(Guangzhou Evergrande FC)は16日、総工費120億元(約1819億円)に及ぶ新スタジアムの建設を開始した。2022年末に完成予定で、収容人数はスペイン1部リーグのFCバルセロナ(FC Barcelona)の本拠地カンプ・ノウ(Camp Nou)を上回る10万人。サッカー専用スタジアムとしては世界最大となる見込みだ。

 広州恒大は計8度のリーグ優勝と2度のAFCチャンピオンズリーグ優勝を誇り、ホームゲームで平均5万人の観客を集めている。新スタジアムは広州市(Guangzhou)が「花の都市」として知られていることにちなみ、スイレンが花開くデザインとなっており、海外のスポーツメディアは「信じられないデザイン」と驚きとともに伝えている。

 サッカーは中国の国民的スポーツだが、サッカー専用スタジアムとなると7か所しかない。イングランドの130か所には遠く及ばず、日本の13か所、カタールの12か所、韓国の9か所にも及ばない。大のサッカー党の習近平(Xi Jinping)国家主席が率いる中国政府は、近い将来のサッカーW杯誘致をにらみ、国内サッカーの振興を積極的に後押ししており、全国で新たな主要スタジアムの建設が進んでいる。広州恒大の新スタジアムはその象徴となる。

 一方で、中国メディアの中には、「中国サッカーに足りないものは専用スタジアムだけではない」という冷静な意見もある。「大金をもらっているのに強くならない」という指摘だ。

 2019年にアラブ首長国連邦(UAE)で開催されたAFCアジアカップ(AFC Asian Cup)では、中国代表はベスト8に終わった。2006年のサッカーW杯ドイツ大会でイタリア代表を優勝に導いた名将マルチェロ・リッピ氏(Marcello Lippi)を推定年俸13億円で代表監督に招き、2015年にオーストラリアで行われたアジアカップのベスト8を超える大会4強入りが期待されたが、その壁を破れなかった。中国メディアの間では「リッピ監督の多彩な戦術を、中国代表選手たちが吸収できなかった」という酷評もあった。

 国際的に伸び悩む背景には、中国サッカー界の「金満体質」があると指摘されている。

 中国の経済発展で潤沢な資金を持つ中国企業は、サッカーチームへ競うように投資をしてきた。それに伴い、選手たちの年俸は飛躍的に向上。だが、次世代の選手育成やサッカー環境の整備という地道な投資を怠り、選手や監督の年俸など「見えやすい」部分に偏っているのが現状。中国のサッカー担当記者は「中国サッカーのレベルが最も高かったのは2000年代初頭で、選手も取材対応に謙虚だった。今の選手のレベルが高いのはプライドだけ」と皮肉を言うほどだ。

 昨年9月には中国代表GKの張鷺(Zhang Lu)が飲酒による危険運転罪で4か月間拘留される事件が発生。今月に入り、広州恒大に所属する中国代表FWの于漢超(Yu Hanchao)が、広州市の路上で自分の車のナンバーの「E」の字を「F」に書き換える映像が撮影され、警察から罰金5000元(約7万5822円)と15日間の拘留処分を科された。広州恒大は14日に于の解雇を発表したが、「実力が伴わない高給取り」という中国のサッカー選手の悪いイメージに拍車をかけた。

 豪華なスタジアムが建設されても、選手の実力と品位が伴わなければ「仏作って魂入れず」と言われることになる。今後、中国サッカーのピッチでの活躍が注目される。(c)東方新報/AFPBB News