【4月26日 東方新報】中国・四川省(Sichuan)の建川博物館集落(Jianchuan Museum Cluster)で、「新中国瓷(陶磁器)陳列館」が10日、正式に開館した。新中国成立から改革開放初期につくられた陶磁器作品8200点余りが展示されており、特に文革前後の政治宣伝性のある作品は、ポリティカルアート、プロパガンダアートに興味のある人にも必見だ。

 展示スペースは二階建て2000平方メートルあまりで、毛沢東(Mao Zedong)の胸像、広大な人民群衆が社会主義の興隆期に傾けた情熱や生活を反映した群像画などが描かれた茶わんや甕描が陳列されている。解放軍の模範兵士として文革中のスローガンにも利用された雷鋒(Lei Feng)や王杰(Wang Jie)、欧陽海(Ou Yanghai)などの塑像、農民・労働者の陶器人形からは、時代性と庶民の日常を垣間見ることができるだろう。

 作品につけられた解説や写真も興味深く、人民服を着た人々が陶器工場で働く姿を紹介する写真展示もある。目玉展示は「毛主席と56の民族とともに」と題された陶器人形の置物で、細かく作りこんだ民族衣装や民族の特徴を示した表情は、一つ一つじっくりとした鑑賞にたえる高度な美術品だ。この作品は90年代にシンガポールから博物館が買い戻したもので、当時の陶磁器作品の典型であり、最高水準に匹敵するものだろう。

 このほかにも『紅灯記』『沙家浜』『紅色娘子軍』など、革命舞台劇の古典の名場面を切り取った絵付けのつぼなどが並ぶ。

 改革開放によって小康社会(そこそこ豊かな社会)が全面的実現しつつある中国で、建国初期の社会主義建設の理想や毛沢東の号令に奮い立たされた文革期の激情は、忘れたい悪夢か、ノスタルジーを呼ぶ青春か、あるいは今後に生かしたい教訓なのか。21世紀生まれ世代や、中国の近代史にうとい外国人には、キッチュなアートにしか見えないかもしれない。見る世代と立場で大きく印象のかわる陳列館といえよう。(c)東方新報/AFPBB News