【4月19日 AFP】新型コロナウイルスの発生源は、最初に流行の中心地となった中国・武漢(Wuhan)市にある「武漢ウイルス研究所(Wuhan Institute of Virology)」だとする主張について、同研究所の幹部が国営メディアとのインタビューで「あり得ない」と真っ向から否定した。

 新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)対応をめぐる透明性について、中国当局に対するプレッシャーが高まる中、米当局は最高水準の厳戒警備と安全対策が施されたどこかのウイルス研究所が発生源となった可能性について調査を進めている。一方、中国の科学者らは、新型ウイルスは市場で売られていた野生動物から人間へと感染した可能性が高いと主張してきた。

 しかし、武漢市にはウイルス研究所があるため、この研究所から、中でも危険度の高いウイルスを扱う病原体レベル4(P4)研究室からウイルスが広まったとする陰謀説がここへ来て流布している。

 そうした中、同研究室の袁志明(Yuan Zhiming)室長は18日に放映された中国国営の英語放送CGTNのインタビューで、研究室のスタッフは誰も感染していないと述べ、「われわれのところからウイルスが流出することは決してない」と語った。袁氏によると現在、同研究所全体で新型ウイルスに関する異なる分野の研究調査を進めているという。

 同研究所は、新型コロナウイルスに関する情報を1月初めに世界保健機関(WHO)と共有したとして、2月の段階でこの陰謀説を否定していた。

 だが先週になって米政府がこのうわさを公の場で取り上げるようになり、マイク・ポンペオ(Mike Pompeo)米国務長官は新型ウイルスがどのように「世界へ広がっていったのか」について「徹底的な調査」を行っていると表明した。

 袁氏はインタビューで武漢ウイルス研究所からのウイルス流出の可能性について尋ねられると、「あり得ないと考えている」「ウイルス関連の研究を行っている人間として、われわれはどういった種類の研究がここで行われているか、研究所がウイルスやサンプルをどう管理しているか、明確に把握している」と述べた。

 またP4研究室が武漢に存在することによって「人々がさまざまな連想をすることはやむを得ない」が、一部のメディアは「意図的に人々に誤解を与えようとしている」とも批判した。

 米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)と米FOXニュース(Fox News)はどちらも匿名の情報源を引用し、新型ウイルスは誤って武漢ウイルス研究所から流出したのかもしれないとする発言を伝えた。だが袁氏は、こうした報道は「根拠も事実もなく」、「完全な臆測に基づくものだ」と否定した。

 武漢市当局は当初、新型ウイルス流行を隠ぺいしようとした上、流行のピーク時に感染者数の計算方法を繰り返し変更したため、公式の感染者統計には疑問が付きまとっている。市当局は17日、死者数の集計に誤りがあったことを認め、市内の死者数をこれまでより5割近く多い3869人に修正した。(c)AFP