【4月16日 AFP】英国で、新型コロナウイルスと最前線で闘う医療従事者らのために寄付を募ろうと、自宅の庭で歩行器を使い25メートルを100回歩くチャレンジに取り組んでいた99歳の退役軍人、トム・ムーア(Tom Moore)さんが16日、100回目の歩行を達成した。ムーアさんの挑戦には国中が注目し、1300万ポンド(約17億円)を超える寄付金が集まった。

 第2次世界大戦(World War II)中、インドで従軍したというムーアさんは、イングランド南部ベッドフォードシャー(Bedfordshire)の自宅の庭を歩き終わった後、「信じられない、言葉が出ない」と話した。

 臀部(でんぶ)の骨折とがんの治療を受けたムーアさんは、今月末に100歳の誕生日を迎える前に国民保健サービス(NHS)に寄付できればと、当初は目標額を1000ポンド(約13万円)に設定して募金を呼び掛けた。

 ムーアさんの挑戦は、英国だけでも約1万3000人の命を奪った新型ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)のさなかに報じられたまれな明るいニュースとして受け止められ、ムーアさんは国内外で一躍時の人となった。

 ムーアさんは「皆さんの素晴らしい応援に感謝します。忘れられない経験になりました。本当にありがとう」とツイッター(Twitter)に投稿した。

 100回目となった最後の25メートルは、英陸軍のヨークシャー連隊(Yorkshire Regiment)の兵士らに見守られ、テレビで生中継された。

 マット・ハンコック(Matt Hancock)保健・社会福祉相も、ムーアさんは「われわれ皆の心を動かす存在」とたたえた。

 ハンコック氏はBBCの取材に対し、「これは甚大な危機だが、幾筋かの光明もある」「ムーアさんは過去に国のために尽くしてくれた。そして今も国のために尽くしてくれている。NHSへの寄付金集めもさることながら、われわれ皆を元気付けてくれている」と語った。

 これまでに募金した人の数は69万人以上。ムーアさんが呼び掛けを行った募金サイト「ジャストギビング(JustGiving)」では、あまりに寄付が殺到したため一時的にアクセス障害が出たほど。ムーアさんの取り組みには、世界中から称賛が寄せられている。(c)AFP/James PHEBY