「今朝目覚めて私は泣いた…」 新型コロナと闘う仏医療従事者らの苦悩
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【4月2日 AFP】午後8時、人々はバルコニーに現れ、鍋やドラム、トランペット、さらには口笛や拍手でできる限りの大きな音を立て始める──。
フランス中に響き渡るこの音は、封鎖開始からずっと家に閉じ込められている人々がお互いの士気を高めるために役立っているが、もともとは新型コロナウイルスと闘う医療従事者らを励ます目的で始まった。
しかし、この大音響が称賛する医療従事者とその冷静さが今、厳しい試練にさらされている。日々、数百人が命を落としている状況に押しつぶされそうになっているのだ。
看護師のエリーズ・コルディエ(Elise Cordier)さんは、フェイスブック(Facebook)への投稿で、「今朝目が覚めて私は泣いた。朝食を食べながら泣いた。支度をしながら泣いた」と書いた。この投稿は、最前線にいる人々の恐怖と苦悩を如実に表している。
そして、「病院の更衣室に入り、私は涙を拭いた。息を吸って息を吐いた。病院のベッドにいる人たちも泣いている。その人たちのところに行って涙を拭くのは私だから」との言葉が続いた。
新型コロナウイルスの感染のピークをこれから迎えるフランスでは、医療スタッフらがこれまで想像もしなかった事態への対応に身構えている。
パリの病院で集中治療室を取り仕切るエリー・アズレ(Elie Azoulay)教授は、チームを待ち受ける事態に、現場のスタッフは不安を覚えていると話す。この病院では、病床数を新たに50床増やし、収容能力を3倍にした。
しかし現在、そのベッドはすべて埋まっている。
■「尊敬の念を抱かせる」
アズレ氏は、医師や看護師らも他の感染者と同じように命を落としているという状況を皆が把握しているとしながら、「自分自身と家族や愛する人を心配し、事態を乗り越えられないことへの不安、圧倒されてしまうことへの不安に全員さいなまれている」と述べる。
医療スタッフが闘わなければならないのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に肺を冒された患者の苦しみとその後の死だけではない。その他にも、自らが病に倒れること、そして家族を感染させるかもしれないという恐怖だってある。
「しかし皆冷静で威厳もある。尊敬の念を抱かせる人々だ…正直、驚かされている」とアズレ氏は語った。