【4月14日 AFP】フォーミュラワン(F1、F1世界選手権)の元王者デイモン・ヒル(Damon Hill)氏は13日、同じ英国人ドライバーとして知られたスターリング・モス(Stirling Moss)氏について、現役時代に一度も世界選手権のタイトルを獲得できなかったとはいえ、史上最高の名ドライバーに名を連ねていると主張した。

 モス氏が長い闘病生活の末に12日に90歳で亡くなると、F1界からはあふれるほどの哀悼の声が寄せられた。同氏に対しては、ファン・マヌエル・ファンジオ(Juan-Manuel Fangio)氏の威光に何ら劣らぬ評価が与えられるなど、同年代に活躍した中でも最高のドライバーとの呼び声が高かった。ファンジオ氏は1955年から1957年にかけて、モス氏を3度退けてF1王座を獲得するなど、通算5度の世界タイトルを獲得した。

 1996年シーズンにF1の世界王者となったヒル氏も、モス氏は神格化されている名ドライバーと肩を並べるにふさわしいと強調し、「偉大な名前と同じレベルにいる。(ジム・)クラーク(Jim Clark)、ファンジオ、(ジャッキー・)スチュワート(Jackie Stewart)、(ルイス・)ハミルトン(Lewis Hamilton)、ニキ・ラウダ(Niki Lauda)らに匹敵する」とすると、「そうした偉大な選手たちより彼が何か劣っていると考える人はいないはずだ」と述べた。

 モス氏はF1ではGP通算16勝を挙げ、総合2位が4回、3位が3回を数えた。当時のドライバーがF1以外にも数々のカテゴリーでレースに参戦していた中で、同氏はキャリアを通じて合計529レースに出場して212勝を記録した。

 1950年代後半から1960年代前半まで、父親のグラハム・ヒル(Graham Hill)氏がモス氏と競い合っていたヒル氏は、世界王者になれなかったことで苦悩はあったかもしれないものの、そのことはモス氏の評価に何ら影響はないと付け加えた。

「確かに王者になれなくて失望していたかもしれないが、彼はとてもストイックだった。そうした不運も勇気を持って受け止められる人だったし、残念な気持ちも隠していたと思う」

「しかし、このスポーツを知り尽くしているすべてのドライバー、モータースポーツに精通している人々、そして英国民である限り、われわれは彼を偉大な王者と考えている」「誰もが率直に彼を『ザ・マン』と見ている。彼はこのスポーツの先駆者であり、最高のビッグネームの一人だ」 (c)AFP