【4月14日 AFP】中国・武漢(Wuhan)のロックダウン(都市封鎖)が解除され、ヘアサロンを経営するスタイリストのアー・ピン(Ah Ping)さん(43)は仕事に復帰した。しかし、彼のヘアサロンに客の姿はなく、空のいすだけが並んでいる。新型コロナウイルスに感染するのではないかという不安は、今もこの都市を覆っている。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の出発点となった武漢は今、悪夢から目覚めつつある。厳格な移動制限や営業規制は緩和された。だが、新たな感染の波が起きるのではという恐怖が、都市の完全な復活を妨げているのだ。

 学校は再開しておらず、多くの会社は休業したままで、レストランではまだ店内の飲食が許可されていない。地区によっては今も封鎖されたままだ。

 外出や公共交通の利用、また大半の公共施設を利用する際には、携帯電話アプリを通じて「健康」であることを示す必要がある。「人が出てくるようになれば、また感染者が増えるかもしれない。それが本当に怖い」とアー・ピンさんはいう。

 一方で、アー・ピンさんは以前の生活を再開できるのか不安に思っている。ヘアサロンの家賃は3か月で1万5000元(約23万円)で、武漢がロックダウンされた1月23日の直前に支払いを終えたばかりだったが、封鎖解除されたこのタイミングで、また次の支払い期日が迫っているというのだ。「ひどい話じゃないか? 家賃は払ったのに、商売は全くできなかった」

■一歩進んで二歩下がる

 中国の他の多くの都市は平常に戻りつつある。しかし武漢市当局は、規制緩和には新たなリスクが伴うため、正常な状態に戻るまでにはもう少し待つ必要があることを明言している。

 武漢市内の一部の地域では、一歩進んで二歩下がるような状況だ。市当局者によると、「流行終結」が宣言された7000地区近くのうち70か所の住宅地区で先週、その宣言が取り消され、ロックダウンが延長された。無症状の感染者が確認されたためだという。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では肺炎に似た症状が起きるが、中国当局は当初、検査で陽性でも症状のない無症状感染者の数を発表していなかった。武漢の住民の多くはAFPの取材に、これまで通りの生活に戻ることへの不安は消えていないと語った。