【4月10日 AFP】フランスの裁判所は9日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で外出時のマスク着用を住民らに義務付けたパリ郊外の市長に対し、命令の差し止めを指示した。

 マスク着用命令を出していたのは、パリ郊外ソー(Sceaux)のフィリップ・ローラン(Philippe Laurent)市長。10歳超の住民を対象に、8日以降外出時にはマスクを着用するよう義務付けていた。

 これに対し、人権連盟(LDH)のパトリス・スピノジ(Patrice Spinosi)氏が異議を申し立てた。

 スピノジ氏によると、ローラン市長の命令は「自治体内のいかなる状況によっても正当化されず、基本的な行動の自由を著しく侵害する」との判断を、裁判所が示したという。

 スピノジ氏は「公衆衛生を守るための権利と自由の制限を命じることができるのは、政府だけだ」と話した。

 クリストフ・カスタネール(Christophe Castaner)内相も、これは「物議を醸すテーマ」であり、「医学的根拠が得られていない」として、自治体の首長はマスク着用を一方的に命じるべきではないと述べた。

 フランスでは、マスクがウイルス拡散を減速させるか否かをめぐって激しい論争が起きている。

 政府は当初、マスクがどうしても必要となる医療機関で不足していたこともあり、一般市民には必要ないとの見解を示していたが、後に有効であり得るとの立場に転じた。

 調査会社オドクサ(Odoxa)が実施した世論調査によると、病院でのマスク不足により政府が「真実を隠している」と考える市民が76%に上っているという。(c)AFP