【4月14日 AFP】スポットライトの当たることのない戦場を渡り歩き、ときには「たった100ドル(約1万1000円)」の報酬をポケットに収めながら戦ってきたテニス界の名もなき歩兵たちは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)によって一晩で仕事を失った。彼らは今、このままでは食べるものにも困ることになると窮状を訴えている。

 テニス界では、新型ウイルスの影響で男女ともにツアーが4か月の中断に入り、多くの選手が生活手段を断たれた。

 ジョージア出身のソフィア・シャパタワ(Sofia Shapatava)もそうした選手の一人だ。シャパタワは、「世界ランキング250位以下の選手は2、3週間もすれば食べ物も買えなくなる」と危機感を口にし、下部カテゴリーの選手を救ってほしいと国際テニス連盟(ITF)に訴えるが、聞き入れられる見込みは薄いと思っている。

「正直に言って、うまくいくとは思わない」「今はちょっと手いっぱいだから、できる限り早く返信するとは言われたけど、そのメールの後は何も音沙汰がない」

 世界ランキング370位台のシャパタワは、ツアー歴16年になる31歳のベテランだが、主戦場は下部大会であるITF女子サーキット。セレーナ・ウィリアムス(Serena Williams、米国)やロジャー・フェデラー(Roger Federer、スイス)、ノバク・ジョコビッチ(Novak Djokovic、セルビア)、ラファエル・ナダル(Rafael Nadal、スペイン)といった高収入のスターが活躍するきらびやかな四大大会(グランドスラム)とは別世界の大会だ。

 シャパタワはこれまで、シングルスとダブルスで計1500試合近くに出場し、35万4000ドル(約3800万円)の賞金を稼いできた。しかし2020年はフランスと米国で計5大会に出場しただけで、賞金は3000ドル(約32万円)しか手に入っていない。

 それでも、彼女はまだ恵まれている方だと言える。世界ランキングがついている選手は、男女ともゆうに1000人を超える。現在、女子のランキングで最下位グループにいる28歳のクセニア・コレスニコワ(Ksenia Kolesnikova、ロシア)は、今年わずか68ドル(約7400円)しか賞金を稼いでいない。